2018年10月12日

日本鳥学会ポスター賞を受賞して

2018年10月2日
北海道大学理学院 青木 大輔

 この度2018年度大会でポスター賞を頂くことができ、大変うれしく思います。
 私の学会ポスター発表デビューは3年前、ポスター賞が設立された年でした。ポスター賞受賞者の方々を見て、自分もいつか賞を頂けるような研究ができれば、と夢見てきました。そんなポスター賞を受賞できたことを光栄に思います。私の研究はいつも周りの人から「難しい」と言われるので、今回、少しは面白く分かりやすく伝えることができたのかなと思っています。ポスター賞に恥じない様、今後も研究に精進できればと思います。
 本研究は共同研究者の方々無しにはできませんでした。ありがとうございました。また、ポスター賞に選考してくださった委員の皆様、お礼申し上げます。
 ポスター賞の記念品としてmont-bellマウンテンパーカーをいただきました、ありがとうございます。授賞式では青を着ましたが、実際にいただいたのは私の調査のお供であるハスラーと同色のオレンジにしました。来年の調査も捗りそうです。

ポスターの概略
 鳥類はみな集団で生きています。個体は繁殖し、元気な雛を巣立たせることで、集団が維持されます。しかし、海洋島など本来その鳥がいない土地に偶然住むことになった時はどうでしょうか?最初は個体数が少ないと考えられるので、数世代後には集団構成員が皆家族同士になってしまう可能性があります。こうした集団は病気(近交弱勢)が蔓延して絶滅するのではないか?このような集団維持の阻害要因は、理論や外来種の研究から予測されてきました。しかし、生物は自然環境の中で必然的にその土地にいるので、自然集団を用いた研究が必要です。

 私たちに身近なモズは幸運にも、過去数十年に次々と島嶼に集団を形成しました。そのうち小笠原諸島の父島では集団維持に失敗し絶滅しましたが、南大東島では現在も集団が維持されています。遺伝情報は集団構成員の情報を教えてくれるため、この2つの自然集団の遺伝的な比較から、集団維持の阻害要因を探索できると私は考えました。

 結果、絶滅した集団は遺伝構造の劇的変化(ボトルネック)を経験し非常に低い遺伝的多様性をもっていました。一方、維持できた集団は他集団からの移入個体との交雑により多様性が高く保たれていました。また、絶滅集団の個体のみに強い近交弱勢の症状が認められました。遺伝的多様性の違いが近交弱勢の程度に差を生んだことが推察されたのです。

 この結果から低い遺伝的多様性に由来する近交弱勢が、集団維持を阻害する一要因となることを鳥類の自然集団で明らかにできました。これは遺伝的多様性の低下がありながらも近交弱勢を回避するメカニズムが新規集団形成にまつわる進化生態学で重要なことも示唆します。今後はこの多様性の低下と近交弱勢の関係をより直接的に理解できるような研究に発展させたいと思っています。

モズ写真_2018青木大輔.JPG
小樽市で捕獲されたモズ

posted by 日本鳥学会 at 10:00| Comment(0) | 大会報告