2022年01月28日

サロベツのシマアオジの現状と保全活動

サロベツ・エコ・ネットワーク 長谷部真


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図1 シマアオジ

シマアオジが近年急激に減少し、環境省やIUCNのレッドリストでCRに指定され種の保存法に指定されたのは皆さんご存じかと思います(図1)。減少は日本だけでなく世界的な繁殖地全域に及んでいます。渡りの中継地である中国における密猟や越冬地における生息環境の悪化が減少の主な原因として上げられていますが、正確なところはわかっていません。シマアオジの減少を食い止めるために、2016年に中国の広州でワークショップが開催されました。ここでは各国の関係者が一同に集まり、シマアオジの保全のための調査・研究・普及啓発対策について話し合われました。シマアオジの保全に向けた国際的な活動はこの時から継続的に行われています。 

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図2 サロベツにおけるシマアオジつがい数(環境省、日本野鳥の会事業)

シマアオジは1980年代まで北海道の草原に広く分布していましたが、1990年以降急激に減少し、2015年以降はサロベツ湿原でしか繁殖が確認されなくなりました。サロベツでは2017年よりシマアオジの調査が実施され、2017年の31つがいから2021年には18つがいと減少傾向が続いています(図2)。繁殖地はほぼ一箇所に集約され繁殖個体群消滅の危機が続いています。

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図3

一方で海外ではシマアオジの標識・発信機調査により渡りの状況が明らかになってきています。中国では保護指定が上がるなど保全対応も実施され、数が回復している国や地域もあります。

私たちはこの状況を周知するためにシマアオジ展示・パンフレット作成・Tシャツ・トートバッグ・ステッカーの販売等により普及啓発活動を実施してきました(図3)。オンラインでは陸鳥モニタリング会議・日本鳥学会・東アジア鳥学会(The 1st Asian Ornithological Conference)の自由集会でシマアオジについて発表し、今後の保全活動について話し合ってきました(学会の様子が分かる中国鳥類学会による報告記事はこちら)。東アジア鳥学会では中国ワークショップ以来つながってきた各国の仲間からの発表があり、最新情報や研究成果を知ることができました。保全活動として近年までシマアオジが生息していた環境を保全するために国立公園外の湿原環境を購入し、シマアオジ保護区(14.7ha)を創設しました(図4)。

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図4

シマアオジはサロベツで調査・保全活動を行っているタンチョウやチュウヒと異なり、小鳥のためか一部の愛好家を除き知名度も低く、一般にその存在や重要性が十分に周知されていない状況ですが、今後もシマアオジ繁殖個体群の回復のために繁殖調査や普及啓発活動を継続していきます。
posted by 日本鳥学会 at 16:38| 研究紹介

2022年01月14日

広報委員長交代のご挨拶

広報委員会 上沖正欣

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 森さやかさんより広報委員長を引き継ぎました上沖です。

 広報委員会は2000年(当時の名称はホームページ委員会)に発足し、既に20年以上が経ちました。先の退任挨拶で森さんが言及されていたように、ニューノーマル時代を迎え、インターネットを介した情報発信は益々その重要性を増してきています。今後も、広報委員会としての役割を粛々と果たしていきたいと考えております。特に、2005年から発行されている鳥学通信については、学会内外を繋ぐプラットフォームとしてより一層の充実を図っていく所存でございます。

 本年も鳥学通信をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

※過去の鳥学通信はこちら
http://ornithology.jp/newsletter1.html

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写真は記事には関係ありませんが、おめでたい感じがする松に止まるキジ(2019年11月5日 佐渡)。
posted by 日本鳥学会 at 22:00| 挨拶