2022年08月15日

日本鳥学会2021年度大会自由集会W1報告:JOGA 第 25 回集会「新たな局面に入った!? 今後のガンカモ類研究の発展を目指して」

東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク
(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ

企画者:澤祐介(山階鳥類研究所)・嶋田哲郎(宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)・牛山克己(宮島沼水鳥・湿地センター)・神山和夫(バードリサーチ)


1.はじめに

 近年、東アジアではガンカモ類研究が飛躍的に進んでいます。その一端となったのは、中国の研究者らが中心となり、およそ1,000羽にもおよぶガンカモ類、ハクチョウ類を東アジアの広域レベルで大規模に追跡した研究で、その成果は2020年12月にWildfowl 特集号第6巻にまとめられました。まさにこれまで「線」であった渡りルートが「面」となった瞬間でガンカモ類研究は、新たな局面に入ったと感じました。

 一方、上述の大規模追跡には、シジュウカラガンやハクガンなどは含まれていませんし、まだまだ残っている課題もあります。これらの研究から、日本の地の利や研究ネットワークを活かした日本ならではの研究課題も改めて見えてきます。それらへの取り組みを進めていくため、どのようなことが必要になってくるのだろうか。本自由集会では、日本での研究課題に取り組むために必要な技術としての「捕獲・標識」に着目した、「EAAFPガンカモ類作業部会国内科学技術委員会」、日本の強みである全国の調査ネットワークを基礎とした市民科学促進を目指す「渡り鳥CEPAワーキンググループ」の取り組みを紹介しつつ、どう今後のガンカモ類研究を盛り上げていくか考えました。


2.東アジアのガンカモ類研究界隈で、今、何が起こっているのか(牛山克巳)

 世界中に水辺に分布するガンカモ類は,生態的多様性に富み,人との関りも深く,分類や進化,行動,野生生物管理などのモデル生物として,様々な学問分野の発展に寄与しました.

 ガンカモ類研究は社会的な関心も高い欧米で発展しましたが,日本においても1900年代初頭から黒田長禮氏や羽田建三氏による先駆的な研究がされ,1970年代からは地域ごとの生態や環境要因の解析,衛星追跡による渡り調査などの形で研究の裾野が広がってきました.しかし,それでもまだ比較的研究事例は少なく,国内におけるガンカモ研究はまだ発展途上にあると言えます.

 一方で東アジアを見渡すと,近年ガンカモ類研究の界隈で大きな変革が起きています.その中心は中国で,高病原性鳥インフルエンザ対策のための豊潤な研究予算,渡り研究にイノベーションを起こしたGPS発信機の開発,湿地保全への国家的な取り組みなどに後押しされて数多くの研究がされています.

 研究素材として有用で,研究を進める社会的背景にもめぐまれているガンカモ類の研究を,今後日本国内でも発展させていくためには,研究者がより手軽にガンカモを捕獲し,研究対象としての可能性を広げることが重要と考えられます.また,身近で目立つガンカモ類の特性を活かして,市民科学を拡充することもガンカモ類研究の可能性を広げる上で重要です.それらに関わる「ガンカモ類作業部会国内科学技術委員会」と「渡り鳥CEPAワーキンググループ」が両輪となり,ガンカモ類研究に新たなウェーブを起こすことができるのか...ご注目ください.


3.誰かいい名前を考えて!ガンカモ類作業部会国内科学技術委員会の紹介(澤祐介)

 東アジアで盛り上がっているガンカモ類研究ですが、日本のフィールドの特徴を活かした研究とはなんでしょうか?日本にはマガン20万羽以上が越冬する安定的な越冬地をかかえ、個体数カウントなどの調査ネットワークも整っています。さらには、コクガン、ハクガン、シジュウカラガンなど、日本が重要な中継地、越冬地となっている種がおり、東アジアで減少が著しいカリガネに関してはその個体数が増加してきています。まさに、日本が東アジアのなかでも「主」フィールドとして活躍する研究課題がたくさんあります。

 日本でこれらの研究課題を進めていく上で、制限要因になっていることは何だろうか?そのうちの一つは、「ガン類を捕獲し、標識することの難しさ」であると考えています。ガン類の捕獲には、罠を扱う技術、罠を仕掛ける場所の見極め、誘引、許可関係などなど、クリアしなければならないことも多数あります。これまで、捕獲は一部の技術者に頼ったものが多かったですが、それでは大規模追跡や標識数を増やしていくことはなかなか難しいと感じています。

 そこで私たちは、「捕獲・標識できる人を増やし、中長期的に研究が持続していく体制を整えること」を目的に「EAAFPガンカモ類作業部会国内科学技術委員会」を立ち上げました。この委員会の中では、ガン類捕獲に関連するマニュアルを整備したり、ガン類の主要渡来地で捕獲研修会を実施したりして、ガン類の捕獲ができる技術者を増やしていきたいと考えています。さっそく、2021年10月、2022年4月に宮島沼での研修会を実施し、5羽のマガン捕獲にも成功しました。

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罠の設置方法の研修


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マガンを罠で捕獲した様子


 ガン類の捕獲は、罠の取扱技術だけでなく、どの場所にいつ集まるのか?といった事前の下見や情報が重要です。罠の特性を知ったうえで下見をすることで、捕獲チャンスは格段にあがります。鳥を触ったことが無い方でも貢献いただけることはたくさんありますので、ご興味のある方はぜひ、今後開催される研修会にご参加いただけますと幸いです。

活動内容の詳細は下記のHPへ!
https://miyajimanuma.wixsite.com/anatidaetoolbox/awgstcjapan


4.カラーマーキング報告フォーム、はじめました(神山和夫)

 移動を調べるために首輪や足環を装着された野鳥がいます。首輪はプラスチック製、足環にはプラスチック製と金属製のものがあり、プラスチック製は色が付いているのでカラーマーキングと呼ばれます。観察した種や場所、日時などの情報を簡単に登録できるフォームがあれば記録が集まりやすいだろうと考えて、「ガンカモ類作業部会国内科学技術委員会」の活動の一環として、バードリサーチのWebサイトで2020年12月にガンカモ類を対象にしたカラーマーキングの報告フォームを公開しました。

 バードウォッチャーやガンカモ調査ボランティアの皆さんから情報が届くと予想していましたが、他にも野鳥写真家の皆さんからも多くの記録が寄せられ、2020/21年の越冬シーズンだけで105件の記録が集まりました。カラーマーキング報告フォームには、こちらのURLでアクセスできます。
https://www.bird-research.jp/1_katsudo/gankamo_hyosiki/index.html

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2020/21年にカラーマーキング個体が観察された地点と種別報告件数


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カラーマーキング報告フォーム



5.CEPAってなんやねん(牛山克巳)

 CEPAとは,communication, education, participation, awarenessの略語で,生物多様性の保全や持続的利用に,人々の理解と参加を求めるための手段全般を指します.もともとはラムサール条約において生まれた用語で,今では生物多様性条約やEAAFPにおいても取り入れられていますが,ラムサール条約ではCにcapacity buildingが加わったり,生物多様性条約ではconnecting, change of behavior, empowerment, policy instrument, actionなどを関連する用語として加えたりしています.

 ガンカモ類の保全管理におけるCEPA活動は,市民科学の拡充,サイエンスコミュニケーションの深化,ステークホルダーとの合意形成など,あらゆる面で重要です.そこで,CEPAに関する情報交換と協働取組を実施するため,2021年に渡り性水鳥の重要飛来地における自然系施設職員,関連NGO,研究者などがあつまって「渡り鳥CEPAワーキンググループ準備会」が発足しました.

 活動は始まったばかりですが,まずはYou tubeチャンネルを立ち上げて,月一で勉強会の様子を配信したり,Facebookグループをつくって情報交換を図り,交流を深めたりしています.引き続き,ガンカモ研究の発展につながるような広報・普及啓発活動や,研究者と現場関係者と市民科学の相互連携の強化などを進めたいと考えていますので,興味がある方はぜひご参加ください.

「渡り鳥CEPAワーキンググループ」のページ
https://miyajimanuma.wixsite.com/anatidaetoolbox/cepawg-japan


6.ついにシジュウカラ物語の本がでましたが、シジュウカラガンもハクガンも本格的研究はこれからですよ(呉地正行)

●アジアのシジュウカラガン回復

 ⽇本雁を保護する会は、シジュウカラガンの復活を願う⽇⽶ロの⼈々と協働し、約40 年をかけて千島列島から⽇本へ渡る群れを復活させた。

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日本国内でのシジュウカラガンの分布(日本雁を保護する会まとめ( 〜 2019/20)


 「シジュウカラガン物語」(京都通信社, 2021)は、シジュウカラガンはどのような鳥か、なぜ絶滅に追いやられ、どのように復活したのか、今後の課題など、その全史をまとめたモノグラフである。

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シジュウカラガン物語
(京都通信社, 2021)


 多数生息したシジュウカラガンは、20世紀初頭に繁殖地のアリューシャンと千島で相次いで始まったキツネの大数放飼のため、絶滅の淵へ追いやられた。
 
 アジアのシジュウカラガン回復計画は、⽶国の支援を得て始まり、1992年からは日米ロ3 国共同で実施し、熱い思いが運も味⽅につけ、約10,000 ⽻の群れの復活へと結びついた。

 近縁種で特定外来種のオオカナダガンも関連団体と協働し、野外除去に成功。農業者と協働し、「ふゆみずたんぼ」の普及も⾏い、大型水鳥の⽣息地保全・回復に貢献した。

 今後の課題は、DNA分析による個体群レベルの分類、 実施中のGPS送信機による繁殖地、渡りの経路、ホットスポットの特定。

●アジアのハクガン復元

 これまでの取組で、2,000羽程度にまでに復元できた。収集情報の冊子化を準備中。今後の課題は、実施中のGPS送信機調査拡充による繁殖地等の特定、モノグラフの完成。


7.おわりに

 本自由集会には最大115名の方々にご参加いただき、様々なご意見をいただきました。

 特に、これまで呉地氏を中心として日本雁を保護する会で実施してきたガン類の保護、復元の取組は、世界に誇る日本の成果であり、それらが下地となって現在の研究の盛り上がりがあることが言及されました。
 
 現在は、モニタリング、標識、衛星追跡、市民活動などすそ野が広がってきていますが、研究や普及啓発をどのような方向に向かって推進していくのかを示していくことが重要との意見がありました。特にガンカモ類の多くは現在、個体数が増加しており、その中での保全をどのように位置づけて考えるのかは今後の課題となりそうです。また、農業被害や高病原性鳥インフルエンザとの関わりも深いため、保全だけでなく、「管理」を含めて考えていくことも重要になってくるように思います。

 ガンカモ類研究は、皆さんから話題提供いただいた通り、たくさんの研究課題があり、最新技術の取り込みも行われています。今後、さらに多くの方がたにガンカモ類研究に携わっていただき、発展させていくことができればと考えています。

posted by 日本鳥学会 at 18:14| 大会報告

2022年08月12日

日本鳥類目録第8版の編集について

西海 功(目録編集委員長)

 日本鳥類目録は1922年の初版発行以来10年毎の改訂を目指してきた。第3版までは目標通り10年おきに改訂できたが、第4版以降は短い時でも12年、長い時には26年も改訂に年月を要した。最新の第7版は2012年に発行されたので、次の第8版は10年後の2022年、つまり今年の発行が目標であった。2018年に第8版編集のための目録編集委員会が組織され、今年の発行に向けて準備が進められてきた。第8版では新たな試みをいくつか取り入れたが、特に大きな試みとして次の2つを実施した。一つはパブリックコメント(以下、パブコメ)の実施、もう一つは海洋分布の追加である。不運なことに、この編集の後半の追い込み時期にコロナ禍に見舞われた。新たな試みが予想以上に時間を要したことにコロナ禍による作業の遅延が重なり、2022年中には発行ができなくなり、2023年9月まで発行を延期せざるを得なくなっている。会員はもちろん、出版関係者や行政など関係する諸機関にも多大なご迷惑をおかけすることをお詫びし、来年9月の発行をお約束したい。
 パブコメの実施もあり、今回の目録の編集にあたっては多くの方々から意見が寄せられている。第一回のパブコメは、採用種・亜種とその学名と和名に関して2021年2月から4月まで行われた。第二回のパブコメは分布も含めて全体のことについておこなうが、11月の網走大会までにリストを提示して、来年1月末まで意見を募りたい。これまでにいただいた意見のうち比較的大きなこととの関りで説明を要すると思われることを以下にご説明したい。

1.日本鳥類目録とは?
 鳥類目録(Checklist)とは、ある地域(または世界全体)の種・亜種の分類学的な包括的リストで、分布地やそのステータス(留鳥、越冬、通過、迷鳥など)が示されているが、通常、形態情報や写真、生態情報は示されていないものである。その日本地域版が日本鳥類目録であり、日本鳥学会が発行する日本鳥類目録は幸か不幸か現在では唯一の日本鳥類目録となっている。しかし歴史的には20世紀初頭まで複数の日本鳥類目録が存在した(森岡, 2012)。また世界の鳥類目録はIOC World Bird ListHoward and Moore Complete ChecklistBirds of the World, Cornell LaboratoryClements Checklistなど多数ある。日本鳥類目録が現在1つしかないことで、日本の鳥類フィールドガイドや行政が日本鳥学会の目録に沿って鳥の種の分類や呼び名(和名や学名)を使うことが通例となっている。
 しかしBrazil (2018) のように、IOC Listを基本にして著者の判断も加えながら独自の分類でフィールドガイドを作ることもできる。このような図鑑を良く思わない人もいるが、私はむしろ歓迎したい。鳥の正しい分類というものが自然界には存在していると私は考えているが、その正しい分類を人が完全に認識しつくせるとは思っていない。全ての目録は仮説であって、その時点での科学的知見から見て、最も妥当と思われる分類を編集者が組み立てて提唱しているのが目録ということになる。図鑑の編集者は分類を特定の目録に依拠して編集することもできるし、気に入った分類がどの目録にもないなら独自の分類をおこなって図鑑を編集することもできる。例えばオーストンヤマガラが日本鳥類目録では種ヤマガラの一亜種として扱われているのに、Brazil (2018)では独立種として扱われているというように、異なる分類が採用されることで、一般のバードウォッチャーもその種・亜種の分類が定まっていないことが理解できる。
 日本鳥類目録は日本産種の選定を文献主義に基づいておこなっているが、「目録は分類も含めて文献主義を取るべき」と考える人もいる。ある分類を示唆する結果が論文で示されたなら無条件でそれを全ての目録が採用すべきで、もしそれに異論があるなら反論を学術誌に投稿すべきという。これは無理難題というもので、理想としてはあり得ると思うが現実的ではない。もしそれが現実的であるなら世界の鳥類目録が多数存在することはなく、どの目録も同じ内容になるだろう。しかし、目録第8版の出版後には、できるかぎり分類の根拠についても説明していきたい。
 日本鳥学会の目録は、幸いにも現在では唯一の日本鳥類目録で、多くの図鑑や日本の行政がその分類を採用しており、その結果、鳥の分類や呼び名についての混乱は日本ではそれほど大きくないと思う。不幸な側面としては、利用者には選択の権利が用意されていないことであり、また上記のとおり、分類が定まっていない場合でも、それを知ることが少し難しい面があることだろう。

2.和名について
 鳥の標準和名を定着させることについては、歴史的にも日本鳥類目録が大きな役割を果たしてきたといえる(森岡, 2012)。その点からも日本鳥類目録は鳥類和名について大きな責任を負っている。鳥類和名の規則や慣習については別稿に譲るが(西海, 2018)、和名について日本鳥類目録は慎重な検討をおこなってきたし、第8版の編集でもいくつかの大きな検討が行われている。目録第6版「はじめに」で詳しく説明されているように、主要な亜種の和名は種和名と一致させるという原則を日本鳥類目録は採用してきた。ただ、第8版ではそうすることで不都合が生じる場合には例外を躊躇なく設けることとした。ニシセグロカモメの亜種をホイグリンカモメとし、メグロの基亜種をムコジマメグロとすることがその例外に該当する。
 オリイヤマガラやオガサワラカワラヒワなどこれまで亜種として扱われてきたものを種に格上げする場合には、オリイガラやオガサワラヒワと短い和名に変更することにした。このような和名の変更には、大きな危惧を表明される方も複数おられたが、短くする利点を優先させていただいた。ウチヤマセンニュウがかつてシマセンニュウの亜種とされていた時にはウチヤマシマセンニュウという亜種名で呼ばれていたが、種に格上げされた際に短い和名にしたことなど日本鳥類目録の伝統を継承したことになる。ただ、リュウキュウサンショウクイとホントウアカヒゲは同様に亜種から種に格上げされるが、適切な短縮ができず和名の変更はない。
 逆に種サンショウクイは、リュウキュウサンショウクイが独立種となることで、単形種(亜種がない種)になるが、その和名を変えてほしいという要望があり、検討することになった。IOC Listの英名は、Ashy Minivetと元々呼ばれており、Ryukyu Minivetが独立種となった後も変わっていないが、このように種の枠組みが変わる場合、IOC Listでの英名はより適切と思われるものに変わることがある。例えば、メジロの英名はJapanese White-eyeだったが、中国南部の亜種simplexhainanusが別種として独立し、フィリピンからインドネシアに分布するmontanusが加わることで、Warbling White-eyeという英名がIOC Listなどでは与えられている。対照的にこれまで日本鳥類目録は種の枠組みが変わることでは種和名を変えたことはないが、今回は例外的に狭義の種サンショウクイには新たな和名ウスサンショウクイを充てることが検討されている。
 第8版への改訂に向けた検討の中で、最も大きな検討が行われたのは、アホウドリの和名についてだった。この和名を蔑称と感じ、不快感を表明し、和名の変更を求める意見を複数いただいた。この件は目録委員会だけでなく、評議員会でも討議された。生物和名の蔑称に関する自然史系関連学会での扱いを調査したところ、差別的用語を理由に動物標準和名を改称したのは、関連学会の中で魚類学会の2007年の改称のみだった。メクラウナギをヌタウナギに、バカジャコをリュウキュウキビナゴに改称するなどした(松浦, 2007)。その際の目的として「人権に対する配慮」と「言い換えや言い控えによる混乱を収めること」の2点が挙げられた。現在までのところ「言い換えや言い控えによる混乱」が生じていない動物名については差別的用語を含むものでも改称せず、和名の安定性をより重視するというのがこの問題の扱いの標準となっていると判断された。アホウドリの和名については今回の指摘で人権の観点から不快に感じる人が少なからずいることははっきりしたと思うが、この呼称による「混乱」の例は今のところ知られていない。もしも鳥学会がアホウドリの和名を「人権配慮」を理由に改称すると、関連学会への影響も懸念され、事前の説明と議論が不可欠となる。少なくとも第8版の改訂に間に合わせることはできないし、改称の方向で学会が動くことも少なくとも当面は難しいという判断となった。

3.まとめ
 パブコメなどを通して諸方面からいただいたご意見は、当然ではあるが委員全員が理解するように努めた。どれも理解できる意見ばかりだったと私は感じている。しかし、「こちらを立てればあちらが立たず」ということが起きてどちらかを選択せざるを得ないことが多くあった。また現実と理想とのギャップや私個人も含む鳥学会の力量不足から第8版で取り入れられない意見も少なからずあったことは率直にお詫びしたい。ただ、労力を割いて意見を提出したことが無駄だったと無力感を感じる方がもしおられれば、それは違うと申し上げたい。すべての意見が少なからず当委員会や各委員の認識の向上に役立ったと思うし、今後の鳥類目録に多少なりとも影響していくことになるとご期待いただきたい。
 今年は日本鳥類目録初版が出版されてからちょうど100周年にあたる。この記念の年に改訂第8版が出版できず、来年に延期になるのは誠に残念で、かつ申し訳なく思うが、パブコメの意見を検討できた(第2回についてはこれから検討できる)ことと海洋分布情報が追加できることはこれまでの日本鳥類目録にない大きな進歩であり、来年9月の出版に大いにご期待いただきたい。

引用文献
Brazil, M., 2018. Birds of Japan. Christopher Helm, London.
松浦啓一, 2007. 差別的語を含む標準和名の改名とお願い.
森岡弘之, 2012. 日本鳥類目録の変遷. 日本鳥学会誌, 61 (Special Issue): 74-78.
西海 功,2018. 鳥の和名.海洋と生物, 40(2): 139-141.
posted by 日本鳥学会 at 10:47| 委員会連絡

2022年08月02日

東京農大北海道オホーツクキャンパス 野鳥研究会通信 その1

オホーツク野鳥研究会

日本鳥学会会員のみなさま,こんにちは。
日本鳥学会2022年度大会の開催地となりました,北海道オホーツクキャンパスの野鳥研究会です。網走で会員のみなさまにお会いできること,鳥に関するさまざまな研究発表に触れられることをたいへん嬉しく思っています。学会中の網走滞在がより充実したものになるように,これから,農大生目線でみた網走周辺の鳥見スポットやおススメの観光名所,食事処,注意点など、役立つ(かもしれない)情報を連載で発信していきたいと思います。大会に先立ち旅程を立てる際の参考にしていただければ幸いです。
さて、初回の今回は,気軽に訪れることのできる網走市周辺の鳥見スポット第一弾です。

<網走市周辺鳥見スポット第一弾>
●東京農業大学北海道オホーツクキャンパスフットパス:通称ファイン・トレール

オホーツクキャンパス内に作られた全長約5kmの散策路で,森林やオホーツク海などの自然景観と,農業の生産現場風景との共生と調和に関するプロジェクトの一環として,2002年に学生と教職員により整備されました。パッチ状に構成されるさまざまなタイプの森林内を巡るほか,一部は農場や家畜の放牧場に隣接します。天気が良ければ知床連山やオホーツク海を臨むことができ,開拓時代の遺産もあります。野鳥のほか,エゾリスやキタキツネなどさまざまな野生動物の生息地でもあり,学生の実習や調査に利用されています。また,動植物の四季の変化を楽しむことのできる,地域住民の憩いの場や散歩道としても親しまれています。
野鳥研究会は定期的にファイン・トレールで観察会を実施しており,学会開催時期には一時的に滞在するものも含めて,以下のような鳥たちを見ることができます。

[ファイン・トレールで会期中に観察できる可能性のある主な種]
トビ・オジロワシ(たまにとまる)・オオワシ(上空通過)・コゲラ・アカゲラ・クマゲラ(採餌)・ミヤマカケス・ハシボソガラス・ハシブトガラス・キクイタダキ・ハシブトガラ・コガラ・ヒガラ・シジュウカラ・ヒヨドリ・シマエナガ・ゴジュウカラ・キバシリ・ムクドリ・ツグミ・ハクセキレイ・カワラヒワ・マヒワ・ベニマシコ・シメ・カシラダカ・エミュー(飼育・鳥インフル感染防止のため現在非公開)

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ファイン・トレールでの冬の自然観察実習



ファイン・トレールには,どなたでも自由に立ち入ることができますので,学会プログラムの空き時間などに森の散策やオホーツクの風景をお楽しみください。また,大会期間中にはプチ・エクスカーションとして、ファイン・トレールにて朝の探鳥会を行います。私たち野鳥研究会の学生がガイドしますので,興味のある方は大会ホームページのエクスカーションのページをご確認ください。

posted by 日本鳥学会 at 09:27| 行事連絡