2022年10月23日

ヨーロッパの大学院に留学してみた Bドイツでの生活

(ジャンモネ大学・マックスプランク鳥類学研究所 五藤花)


前回「Aフランスでの生活」はこちら

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冬のブロッケン鉄道。蒸気機関車でブロッケン山を駆け上がる。


ドイツに来た瞬間のことは今でもよく覚えている。
フランスから来る鉄道との乗り換え駅であるシュトゥットガルト。12月下旬の凍てつく空気のなか、鉄道のホームで1時間半ほど待っていた私の身体は芯まで冷え切っていた。大荷物を抱えて高速列車ICEに乗り込み、その席に座った瞬間、もわもわした生地の座席にふわっと包み込まれた感じがした。「ああ私は帰ってきたんだ」とかいう妙に格好つけた台詞とともに不思議な安心感を味わった。(たぶん座席が温かかっただけ)

順調な滑り出しで、私のドイツ生活は始まった。マックスプランク鳥類学研究所は自然のなかにぽつんと建物が落ちてきたのかと思うほど周りが緑にかこまれている。自然好きには素晴らしいロケーションだった。そこで研究している人たちはみな温かく、太田さんの記事でも以前言及されていたように皆が英語で話してくれるので、意思疎通がとりやすくて安心して生活できた。

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研究室のメンバーでバードソンに参加。朝から晩まで鳥を探して自転車で走り回った。


しかし研究はなかなか思い通りにいかなかった。日本の研究室で相手にしていたのは動物の標本や分子実験道具、コンピューターの画面だった。しかし行動を知りたいと思ったら対象になるのは生きている動物だ。計画通り・予想通りにいかないことが多くて、研究の締切が決まっている身としては焦る。先生たちに何度「彼らは機械じゃないから、心配しすぎないで」と言われたことだろう。

そしてコロナ禍の留学で一番つらいこと、孤独が降りかかってきた。日本との時差は夏時間で7時間、冬の時間で8時間ある。こちらが仕事終わりにさぁ家族や友達と話したいとおもっても向こうは深夜である。悲しいことがあっても、嬉しいことがあっても、共有できる人がいなくてため込んでしまう。そして現地の友達も多くない上に皆多忙だ。研究所は大学ではないから修士の学生が自分を除いて一人もおらず、6月までパーティーなんてひとつもなかったので人と知り合う機会がない。感染予防のために研究室の部屋も個室を与えてもらっているので、過ごそうと思えば一度も言葉を発しなくても一日過ごせてしまう。話す人がいないので言語も上達しない。研究のディスカッションが思うようにできない。恥ずかしい。悔しい。だんだんヒトと話すのが怖くなって、そのままディプレッションのなかへずぶずぶと。残る話し相手は実験対象のカナリアたちだけだ。

そんな私をみてフランス人の先輩がはっきりと一言。「ハナ、土日は休みなさい!」

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研究室の先輩と初めてのアルプス登山。私は滑って転んで帰りは半泣きだった。


先輩のアドバイスに従って、週末は山にいったり、サイクリングしてみたり、電車で少し遠い街に出かけてみたりと頭をすっからかんにして遊ぶようになった。小さいときから運動神経のかけらもない私だが、出かけるための体力をつけようと思って筋トレと運動も少し始めてみた。鳥を見に行く体力もついて、ヨーロッパの食事でだらしなくなっていたお腹も健康的になり、ストレス発散もできて、一石二鳥どころではない。そうして充実した週末を過ごしてから月曜日を迎えると、びっくりするくらい気持ちよく、さあ頑張ろう!という気になれる。お昼にキッチンで人と会えば、週末の楽しかったことで盛り上がれるので話題にも困らず自然に会話ができてありがたい。

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ローテンブルクの可愛らしい街並み。電車と自転車で行くのに6時間かかったが、その価値がある街だった。実はシュバシコウの巣が写っている。


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ドイツとオーストリアの国境からアルプスを望む。


フランス人の先輩曰く「フランスは世界で一番時間を効率良くつかう国」らしい。休むときはしっかり休み、働く時は時間を決めて集中して取り組む。このやり方は私もとても気に入った。先輩に、おかげでとても調子がいいですと伝えると、「ハナが良い働き方を学んでくれて嬉しい」とにっこり笑って言ってくれた。

Netflixのドラマ「エミリー、パリへ行く」に出てくるフランス人が言った “I think the Americans have the wrong balance. You live to work. We work to live.” という言葉にとても共感した。自分の生活と研究とは別のところにあるという認識で過ごすことが大事なように思う。

あんなにフランスから脱出したかったのに、結局私にはフランスが必要らしい。

(続く)
posted by 日本鳥学会 at 23:49| 海外での研究

2022年10月01日

東京農大北海道オホーツクキャンパス 野鳥研究会通信 その3

オホーツク野鳥研究会

日本鳥学会会員のみなさま、こんにちは。オホーツクキャンパス野鳥研究会です。この度の台風14号、網走では大きな影響はなかったようですが、大雨や暴風の被害に遭われた全国の方々には心よりお見舞い申し上げます。
さて、今週も引き続き気軽に訪れることのできる網走周辺の鳥見スポットをご紹介します。11月3日に開催される鳥学会大会公開シンポジウムのテーマは「流氷がくる海〜オホーツクの海と生き物たち〜」で、オホーツクの海鳥に関する講演も予定されています。そこで本シリーズ三回目となる今回は、海鳥観察に適した鳥見スポットをご案内します。

<網走市周辺鳥見スポット第三弾>
●能取岬
網走市街から約10km北に位置する、網走国定公園内にあるオホーツク海に突き出た岬には,白黒ボーダー模様の八角形の能取岬灯台が立っています。岬の周辺は切り立った海食崖で、崖下の岩礁が連なる荒々しい北の海の光景とは対照的に、崖上は平坦な台地に牧草地が広がり、北海道らしい牧歌的な雰囲気が漂います。東方には遠く知床連山が海に浮かび、眺望も最高です。
崖上に沿って柵が設置されており、その手前から海上や岩礁上にいる海鳥類を観察します。大会時期にあたる秋から冬はシノリガモがとても多く、その中にコケワタガモやホンケワタガモが見られたこともあります。ウミガラス類やウミスズメ類も比較的よく観察され、春・秋にはアビ類の大群が見られることもあります。海鳥観察をしていると、目の前をオジロワシやオオワシ、ハヤブサが通過し、台地上の草原や牧草地では、ハギマシコやツメナガホオジロ、ユキホオジロなどに遭遇することもあります。それ以外にも、ここでは渡り途中に立ち寄った思わぬ鳥に出会えるかもしれません。

<学会時期に観察される主な鳥>
シノリガモ・コオリガモ・アカエリカイツブリ・アビ・オオハム・シロエリオオハム・ハシボソミズナギドリ・ヒメウ・ウミウ・ミツユビカモメ・アカアシミツユビカモメ・カモメ・オオセグロカモメ・ハシブトウミガラス・ケイマフリ・ウミスズメ・ウトウ・オジロワシ・オオワシ・ハヤブサ・ハギマシコ など

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冬の能取岬(野鳥研究会部員撮影)

<能取岬へのアクセス>
市街から道道76号を北上して車で約15分。駐車場(無料)にはトイレがあるが、11月は閉鎖されている可能性が高い。


●網走港(網走川河口、港、親水防波堤ぽぽ260)
オホーツク海に注ぐ、一級河川網走川の河口部に位置する河口港。11月上旬は、港の内外と網走川の河口付近でカモやカモメをはじめとする沢山の海鳥類を観察することができます。とくにシノリガモやホオジロガモ、ヒメウが多く、近距離からの観察が可能です。天候に左右されますが、カモメ類は港内や周辺防波堤上で最も多く観察され、とくにミツユビカモメがたくさんいます。バスターミナル周辺のホテルからは徒歩圏内にある、河口や港に隣接する道の駅あばしり二階の食堂で、オホーツク海や海鳥を見ながら食事するのもお薦めです。
徒歩で行くのは厳しいですが、網走港の南側には、防波堤上を散策できる親水防波堤「ぽぽ260」があり、この防波堤上は沖にいる海鳥類の観察に適しています。学会時期には、アビ類を観察できるでしょう。上空には時折ヒシクイが通過するほか、海ワシ類の渡り時期でもあり、崖に沿って飛んでいる姿をよく目にします。

<学会時期に観察できる主な鳥>
ヒシクイ・オオハクチョウ・シノリガモ・ホオジロガモ・アビ・オオハム・シロエリオオハム・ヒメウ・ウミウ・ミツユビカモメ・ウミネコ・カモメ・オオセグロカモメ・ケイマフリ・ウミスズメ・オジロワシ・オオワシ など

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冬の網走川河口(野鳥研究会部員撮影)


3回にわたる野鳥研究会お薦めの鳥見スポットの紹介は、今回が最終回です。網走周辺にはさらに多くの野鳥観察地があります。網走市周辺に限らず、オホーツクエリアの探鳥地情報を知りたい方は、日本野鳥の会オホーツク支部web サイト「オホーツク探鳥マップ」をご覧になると良いと思います。
次回以降は、網走滞在に役立つ(かもしれない)耳より情報をお届け予定です。

posted by 日本鳥学会 at 09:32| 行事連絡