2016年09月25日

日本鳥学会2016年度大会自由集会報告「ドローンを使った鳥類調査」

2016年9月25日
企画者 上野裕介(東邦大学)・時田賢一(岩手大学)
文責 上野裕介


ドローン(UAV)の進歩と低価格化によって,鳥の目線での空撮が身近になった。鳥類学の分野でも,ドローンを使った調査事例が増えつつあり,鳥類学の発展や保全での活用が期待されている。一方,昨年には航空法が改正され,ドローンを活用する上での制約も出てきた。

そこで実際の調査にドローンを活用している演者8名から,鳥類研究における活用法を紹介するとともに,ドローンの特徴や最新機器に関する情報,環境調査の技術,法制度や安全な運用方法などについて紹介する自由集会を開催することとした。

当日は,ドローンに対する期待の表れなのか,約70名の方々にご参加いただくことができ,鳥学会会員の関心の高さがうかがわれた。

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会場の様子


【各講演の概要】
1.チュウヒの繁殖状況調査におけるドローンの試用例
高橋佑亮(宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)

 ドローンを使ったチュウヒの巣内雛数の把握,巣や雛の判読限界高度,ドローンに対する親鳥の反応について報告があった。DJI Phantom2 Vision+を用いた調査では,巣の直上100mからの撮影であれば巣の判読が可能であり,50mからの撮影では巣内雛数の判読が可能であった。親鳥の反応については,飛行高度○mであれば安全であるということは必ずしも言えないが,数十m離せば比較的影響は小さいと思われた。以上の結果から,上記機種を用いてチュウヒの巣内雛数を把握する場合,飛行高度は50m程度が目安であるとの報告であった。
 またドローンは,踏査での調査に比べて省力化できる点や営巣地の植生破壊を伴わない点で有効な調査方法になるとの考えが示された。とはいえ,ドローンはチュウヒにとってストレス以外の何物でもないため,ドローンによる調査の必要性をよく検討し,最小限の使用にとどめるべきとの指摘もあった。

2.ドローンを利用したマガンカウントの試み
神山和夫(NPO法人バードリサーチ)

 マガンのねぐらでのカウントを行うために,ドローンを用いた事例についての報告があった。課題として,出前〜日の出直後の照度が大きく変化する時間帯の撮影であること,またマガンがねぐら出を迎えるまでのわずかな時間で撮影を終える必要があることなど,技術的な難しさが示された。

3.保護区域外のツル識別とカウントの試み
時田賢一(岩手大学農学部)

 飛来個体の増加により,保護区域の外(周辺圃場)で採餌する個体の把握に,ドローンを用いた事例の紹介があった。現行行われている総個体数カウントでは誤差の検証ができないため,個体数のカウントや,採餌地などのツルの土地利用の把握を行う上でドローンが役立つとの報告があった。
一方,ツルの群れへの接近は,低空(撮影高度付近)での水平方向からアプローチは避けた方が良く,離陸地点であらかじめ高度を十分に取ってから撮影地点上空に移動した後,ツルの反応を確認しながら徐々に高度を下げたほうが良いとの考えが示された。また,ドローンの音を気にしているようだとの指摘もあった。

4.釧路湿原におけるタンチョウの調査事例
松本文雄(釧路市動物園)・小林功・山田浩行(パシフィックコンサルタンツ株式会社)・上原裕世(酪農学園大学)

 アクセスが困難な湿原内の調査において,個体の発見や雛数のカウントに,ドローンが活用可能であることが示された。特に,ドローンにズームレンズ付きのカメラを搭載することで,より高高度での撮影が可能になり,個体への影響も小さくすることができそうだとの報告があった。

5.湿原性鳥類の営巣植生調査におけるドローンの試用例
中山文仁((一財)自然環境研究センター)
 
 湿原性鳥類の調査における課題として,背丈の高いヨシなどにより見通しが効かないこと,植生に覆われた水域の配置がわかりにくいことが挙げられる。そこでドローンによる空撮を行うことで,営巣場所や周辺環境(水域)を調査した事例が報告された。特に周辺環境(水域)の調査では,空撮画像のRGB情報をもとに簡易な画像処理を施すことで,およその範囲を抽出できることが示された。

6.モニタリングにおけるドローン技術の利用可能性
鈴木透(酪農学園大学)

 鳥類のモニタリングへの空撮の利用可能性を検討するために、飛行高度と画像の解像度による水鳥の判別の可能性を報告した。大小のカモ類の種判定,個体数のカウントを行う場合を想定し,原寸大のデコイを様々な条件で撮影することで必要な高度,画角を計算した結果、種の判別には約1cm程度の高い解像度が必要であることが明らかになった。

7.空撮・測量・環境調査の技術と法制度,安全管理
上野裕介(東邦大学)

 ドローンで空撮した画像は,個体や群れのモニタリングだけでなく,地形測量にも使うことができる。そこで,撮影位置を少しずつずらし連続撮影したオーバーラップ画像から対象物の3次元構造を復元する写真測量技術(Structure from Motion:SfM)と,SfMを用いた立体測量の技術について報告した。また野外での検証結果から,おおむね高さ方向の計測誤差が数cm〜5cm程度に収まることを示した。またドローンにまつわる航空法の改正や損害賠償保険,安全な運用方法についてお話しした。

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講演の様子


8.ちょっと変わったドローンの活用法
山田浩之(北海道大学)

 ドローンとは,そもそも飛行機である。カメラを搭載すれば空撮機となり,気象観測やレーサープロファイラなど他のセンサーを積めば計測機になる。アタッチメントを装着すれば,サンプル採取や運搬が可能になる。その一例として,採水ボトルをぶら下げたドローンによって池の水を採取する方法を報告した。一方,不運にもドローンが墜落することもある。墜落したドローンの再利用法(プロペラ編,カメラ編)を紹介した。

【まとめと感想】
 これまで空撮画像を得るには,高額な航空写真や衛星写真を購入する他なかった鳥類研究者にとって,安価で簡単に空撮を行うことができるドローンは大変便利な道具である。簡単に空撮が行えるようになったことは,調査のために人が鳥の生息地に立ち入る回数を減らすことにつながり,調査圧の軽減に役立つ。一方,空撮による鳥への影響(特に撮影高度や撮影頻度との関係)は十分にわかっておらず,対象個体に十分に注意しながらの手探りでの調査が続けられている。そのため営巣地や塒の空撮などで,必要以上にドローンを接近させたり,頻繁に飛行を繰り返したりすることは慎むべきである。本自由集会のような調査事例や技術情報の共有から,ドローンによる鳥類調査を鳥にとっても人にとっても安全で快適なものにする必要があるだろう。
他方,今回の自由集会では鳥類を専門とする人たちが,個個別別に運用スキルを磨き,調査技術の改良・開発にも取り組んでいる現状があることがわかった。ライト兄弟が1903年に空を飛んでから,既に110年超が経過し,飛行機を用いた空撮や調査技術は大きく進歩している。またドローン調査についても,防災分野などでは10年以上前から実用化が試みられてきた。それらの技術の蓄積を導入することで,ドローンによる鳥類研究を大きく飛躍させることができるだろう。他分野の研究者や技術者と協力することで,鳥類の生態解明や生息環境の把握,保護・保全につながる新たな発見や気づきを,ドローンという鳥の目が私たちに与えてくれる日も近いと感じている。

※ドローンに関するご質問や共同研究のご相談は,随時受付けています。
 ご遠慮なくお問い合わせください。
posted by 日本鳥学会 at 19:50| Comment(0) | 大会報告
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