2017年01月16日

鳥の学校報告(2016年):第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」

2017年1月16日
企画委員会(文責:水田拓)


鳥の学校−テーマ別講習会−では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っています。第8回は「鳥類研究のためのGIS講習」をテーマとして、2016年度大会の翌日(9月20日)、酪農学園大学において、同大学農食環境学群環境共生学類との共催で実施しました。講師は同大学の鈴木透氏、参加者は35名でした。

講義はパソコンが備え付けられた教室で行われ、参加者は各自そのパソコンを使用しながら受講しました。講師の説明はスクリーンに映し出され、また同じ内容の資料がきちんとファイルされて配られたため、参加者はそれを見ながらパソコンを操作することができました。講義は「GIS(地理情報システム)とは何か」についての説明から始まり、続いてその概念やデータの種類、どのような解析が可能かなど、GISを使用するにあたり知っておくべき基本についての解説が行われました。その後、フリーのGISソフト「QGIS」を各自パソコンにダウンロードし、地図の作成からデータベースの構築、データの作成、データの分析まで、鳥類研究者が実際に使いそうな分析の流れに沿って説明が行われました。

事前アンケートによると、参加者のほとんどはGISの初心者であったため、講師の鈴木氏にはこの参加者層に見合った懇切丁寧な講義をしていただきました。そのおかげで、参加者からは「とてもわかりやすかった」、「今後の研究におおいに役に立ちそう」などの意見が多く寄せられました。
受講者のなかからお二人が参加レポートを寄せてくださり(晝間さよこさん松本経さん)、ご自分の研究との関わり、ためになった点などについて詳しく書いてくださいました。

鳥の学校−テーマ別講習会−は、今後も大会に接続した日程で、さまざまなテーマで開催する予定です。案内は学会ホームページや学会誌に掲載しますので、関心のある方はぜひご参加ください。

講習会風景.JPG
講習会風景


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鳥の学校「鳥類研究のためのGIS講習」に参加して

2017年1月17日
松本経(北見工業大学)


地理的な情報を扱うにはGIS(地理情報システム)ソフトが便利ですが、GISソフトは高額なソフトというイメージが私にはありました。ところが、今回の鳥の学校に参加して、そんな偏見を吹き飛ばしてくれるフリーのGISソフトが既に存在していることが分かりました。酪農学園大学にて開催された講習では、参加者1人1人に1台のデスクトップPCと講習テキストを用意していただき、酪農学園大学の鈴木透さんに講義をしていただきました。午前中は座標値を扱うために必須となる空間参照系や、ポイント、ポリゴンといった空間データの特性の説明から始まり、今回使用した「QGIS」というGISソフトのダウンロード方法と初歩的な操作について、実際にPCを操作しながら体験しました。午後は位置情報を含むデータを利用してQGIS上で地図を作成し、さらにより見栄えのよい地図を作成するための編集方法も教えていただきました。嬉しいことに、インターネット上に公開されている国内植生図、土地利用図、標高データ等の無料ダウンロードサイトについてもご紹介いただき、今後の研究にとってとても有益な情報も得ることができました。後半の講習では、GPSの測位データを地図上にポイントとして描画し、道路のようにラインとして表現される異なる種類の地理データとの間で最短距離を算出する方法や、ラインから一定の距離内にあるポイントを特定してラインとの距離を算出・集計する方法、さらには多数のポイントをもとに動物の行動圏を算出してその面積を求める方法などを体験し、GISソフトの便利さを実感しました。

これまで空間情報の分析には高価なGISソフトを購入するしかないという悲観的な思い込みがあったのですが、特殊な分析方法を必要としないのでしたら、QGISでも分析者の要求を十分に満たしてくれると思います。特に、日本語版QGISはソフト内の表記はほぼ全て日本語で表記されているため、GIS初心者にとってもありがたいソフトです。最近ではQGISに関する書物も増えてきているようですので、鳥類研究に限らず様々な分野でユーザー拡大の可能性を秘めている有望なフリーソフトといえるでしょう。今回の講習会を企画・運営してくださったスタッフの方々に改めて感謝いたします。
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鳥の学校「鳥類研究のためのGIS講座」に参加して

2017年1月16日
晝間さよこ(東海大学大学院人間環境学研究科1年)


私は現在、西表島に生息するカンムリワシの繁殖生態や生息環境の解析を研究テーマとして修士研究に取り組んでいます。カンムリワシの生息環境を解析するには、QGISを利用したいと考えており、これまでは操作方法などを独学で勉強していました。しかし、専門書や論文だけでは理解しきれないところが多く、思うように操作できないことが多々ありました。今回は鳥の学校で「鳥類研究のためのGIS講座」が開催され、QGISの専門家の方から詳しく操作方法を解説して頂けることを知り、基礎から学びたいと思い本講座に参加させて頂きました。

本講座では、QGISの導入として始めに「QGISとは何か」という説明がありました。QGISの基礎となる部分について、データの種類から形式、また空間参照系など、配布された資料をもとに順を追って説明をして頂きました。これにより、QGISが地理情報システムとしてどんなものなのかというイメージをより明確に掴むことができました。QGISで解析をするにあたって使用する基礎データは、国土地理院や環境省のサイトから無料でダウンロードすることができます。それに加えて、Rなどの統計ソフトも用いることで、データ同士の関係性の分析や将来予測が可能になるなど、解析の幅が広がることを知り、ぜひ応用してみたいと思いました。また、本講座では、あらかじめ用意されたデータを用いて、より実践的な操作を学びました。データには、植生図や点の情報が用意されていました。それらを用いて、バッファの作成から、そこに重なる植生の抽出や植生面積の算出、2点間の距離の測定など、アドバイスをいただきながら自分で解析ができるようになりました。私と同じ研究室に所属する、海鳥の採餌海域について研究を行っている卒業研究生も講座に参加しました。GPSなどで得られた点の情報と植生図のような面の情報を組み合わせて解析を行うことができることをしり、現在はGPSから得られた海鳥の採餌海域の環境評価にQGISを利用できないかと、研究を進めています。

短時間の講座でしたが、QGISを学び、理解するきっかけになりました。日本鳥学会を通して視野を広げ、さらに本講座によって学生自身の問題解決に取り組むという良い機会となったのではないでしょうか。
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2016年10月13日

ポスター賞を受賞して

2016年10月13日
東邦大学生物学科 松下浩也


(1)受賞時の心境
 人生初の学会参加ということもあり、学会がどのような場所なのかわからず、私のように形態学を学んでいる人間が果たして受け入れてもらえるのか不安だった。そのため、学会ではポスター賞のことは何も考えず、学会を楽しむことに専念しようと思っていた。最初にポスター賞の受賞を知った時には、「本当に僕でいいんですか?」と審査委員の方々に聞きたくなった。しかし、今となっては、自身の研究をこれだけ評価していただけたことは光栄であり、人生で最もうれしい出来事の一つであったと実感している。そして、今まで苦手であった人前での発表に対して自信がついた。これを励みにして、これからも新たな発見ができるように日々精進したいと思う。

(2)ポスターの概略
 鳥類の特徴といえば、嘴や翼、羽毛などの形態を想像する人が多いと思う。しかし、鳥類の特徴は足にも見られる。鳥類の足は生息環境や行動に対応して多様な形態が見られるが、多くの水鳥の足は水かきをもち、それは蹼足や全蹼足、弁足などに分類される。蹼足や全蹼足は水かきが趾どうしをつなぐ構造をもつ。一方で、弁足は独立した各趾の縁に弁膜と呼ばれる葉状の膜構造をもつ。弁足は現生鳥類のうちツル目クイナ科のオオバン属(Fulica)の全種、ツル目のヒレアシ科(Heliornithidae)の全種、カイツブリ目(Podicipediformes)の全種、チドリ目シギ科のヒレアシシギ属(Phalaropus)の全種の4系統のみで見られる珍しい形態である。しかし、弁足が形成される仕組みは未だ解明されていない。今回、私は弁足を持つツル目クイナ科のオオバン(Fulica atra)と、その近縁種で弁足を持たないツル目クイナ科のバン(Gallinula chloropus)の胚発生を調べた。趾の外部形態と内部形態を2種で比較し、オオバンの弁足形成で観察された新発見について報告した。

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弁足をもつオオバン

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ポスター賞を受賞した感想

2016年10月13日
総合研究大学院大学 加藤貴大


 この度は日本鳥学会のポスター賞を頂くことができ、嬉しく思います.私は研究を始めた2010年から鳥学会に参加しており,今大会で7回目の参加となります.その間に,鳥学会での発表を通して色々な方からアドバイスを頂き,お手伝いをして頂きました.学会の皆様のご助力があっての受賞だと思います.

 他の学会にも実質的に学生を対象としたポスター賞などがありますが,鳥学会が公式に執り行うポスター賞はこれまでにありませんでした.今回,鳥学会の変化に立ち会うとともに,第一回の受賞者となれたことが大変ありがたいです.今後,若手の鳥類研究者にとっては,鳥学会のポスター賞こそが最も身近な目標の1つとなるのではないかと思います.さらに,副賞として学会スタッフTシャツを,mont-bellさんからサンダーパスジャケットを頂きました!(写真1)。これほど豪華なポスター賞は鳥学会にしかないと思います.早く寒くならないかと,いつにも増して天気予報を気にするこの頃です.

 嬉しさがある一方で,少し戸惑うこともあります.もちろん賞を頂いたことは大変ありがたいのですが,ややプレッシャーでもあります.今回が第一回ということもあるので,より一層精進しなければと,身の引き締まる思いです.

 最後になりますが,ポスター賞を創設して下さった評議員の方々,2016年度大会を運営された方々,ポスター賞審査員の方々,そして研究協力して下さった方々にお礼申し上げます.ありがとうございました.

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写真1. mont-bellさんから頂いたレインジャケットを着て野外観察している様子.

発表内容
 スズメ Passer montanusの♂胚死亡率が繁殖条件とホルモンレベルに応じて変化する,という研究を発表しました.スズメの孵化率が6割程度であり,他の鳥類よりも孵化率が低いことが知られています(写真2).この孵化率の低さはイエスズメやスペインスズメなどのスズメ属鳥類でも報告されています.「なぜ,孵化率が低いのだろうか?」という単純な疑問が本研究の出発点です.

 研究を進めていくうちに,多くの未孵化卵は受精卵であり発生初期段階で死亡していること,また,死亡する胚のほとんどが♂であることが分かりました(性特異的死亡).そして,繁殖密度が高い場所や,巣場所競争が激しい場所で繁殖する場合,性特異的死亡が多く見られました.さらに、性特異的死亡の生理的な要因も調べました.性特異的死亡は,♀親や卵黄のステロイドホルモンレベルとの関連が報告されています.そこで,雛の糞中ホルモンなどからコルチコステロン量を測定し,性特異的死亡の関連を示唆しました(前後しますが,繁殖密度などに注目した理由はこれです).

 鳥類では発生段階の他に,巣内雛,巣立ち後段階などでも性特異的死亡が報告されていますが,どのような状況下で死亡率が高まるかについては不明でした.本研究は,繁殖条件に応じて性特異的死亡が起こることを明らかにしました.今後は性特異的死亡の生態学的機能についても調べたいと考えています.

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写真2. スズメの孵化雛と未孵化卵.多くの巣で,孵化しない卵(胚発生初期に死亡する卵)が見られる.

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日本鳥学会ポスター賞 初代受賞者は加藤さんと松下さんに

2016年10月13日
日本鳥学会企画委員会


 2016年度大会より学会が表彰する「日本鳥学会ポスター賞」が始まりました。これまでにも各大会の実行委員会が主催したポスター賞が不定期に開催されてきましたが,今年からは学会が毎年,若手(30才以下)の優秀ポスターを表彰することになりました。

 そして初代の受賞者が総研大の加藤さんと東邦大の松下さんに決まりました。おめでとうございました。受賞者の今後の活躍が「ポスター賞」の価値を決めていきます。プレッシャーをかけるわけではありませんが,今後も良い研究をつづけていってください。

 最後になりましたが,審査をしていただいた6名の方,副賞をご提供いただいたモンベル,そして副賞のTシャツとともに,いろいろな事務手間をおかけした大会実行委員会の皆さま,ありがとうございました。
 初めての審査ということもあり,審査員の皆さんに多大な負担をかけてしまいましたが,今回の反省をもとに,負担が軽くなるようにして来年以降実施していこうと思います。ポスター関係者,指導教官などを除くと,審査をお願いする人が限られていしまうことが賞実施の上の悩みどころでした。来年以降,審査員のお願いがいきましたら,学会を盛り上げるためにもぜひ,快くお引き受けいただけたらありがたいです。よろしくお願いします。

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初代受賞者 加藤貴大さん(左)と松下浩也さん(右)。上に着ているのはモンベルから副賞としていただいたジャケット

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2016年10月12日

日本鳥学会2016年度大会自由集会報告:チュウヒ研究の今

2016年10月11日

企画者:多田英行(日本野鳥の会・岡山)、先崎理之(北大院・農)、高橋佑亮(伊豆沼・内沼環境保全財団)
(文責:多田英行)


チュウヒはヨシ原を代表するタカの仲間で、生態系の豊かさを象徴する生き物です。しかし、繁殖地が限定的であることなどから、これまであまり生態研究が行われてきませんでした。一方で、近年はメガソーラー開発などの新たな課題が発生しており、チュウヒの保全のためにも生態の解明が急がれています。
今大会は国内最大級のチュウヒの繁殖地である北海道での開催ということで、チュウヒの自由集会を開催するには最適な機会となりました。当日は60名を超える参加者に訪れていただき、みなさんのチュウヒへの関心の高さを感じることができました。

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【各講演の概要】
1.日本のチュウヒの生態〜地域や季節による多様性〜(多田英行)
 これまでに報告されている文献を基に、チュウヒの採餌環境や餌動物などが季節によって異なることや、行動圏の広さや営巣環境などが生息地によって異なることなどが紹介されました。

2.勇払原野のチュウヒ(先崎理之・河村和洋)
北海道勇払原野での営巣環境や繁殖成功率について発表されました。営巣地周辺の採食地や人工構造物の多さが、チュウヒのペア数や巣立ち雛数に影響するとの研究内容も紹介されました。

3.北海道のチュウヒの営巣環境について(一北民郎)
北海道で見られる営巣環境について、ササ環境の事例も含め、営巣地の植生や水深などのデータが発表されました。また、これまでの観察経験からチュウヒの営巣環境の選択に関する考察も紹介されました。

4.秋田県八郎潟干拓地のチュウヒ(高橋佑亮)
本州以南最大の繁殖地である八郎潟干拓地での繁殖状況や営巣環境、採食生態などが発表されました。また、遷移の進行によるヨシ原の衰退がチュウヒの繁殖を脅かしていることが紹介されました。

【まとめ】
 本集会では主に繁殖期のチュウヒについて最新の知見が報告され、チュウヒの生態を参加者と共有することができました。一方で、チュウヒの生息個体数や繁殖成功率などの基礎的な情報が未だに把握されていないことを再認識しました。チュウヒの生息地の減少要因として自然開発以外にも遷移の進行が課題であることが指摘され、チュウヒの保全のためには生息に適した代替環境を創出していく必要も議論されました。
各地のチュウヒについてまとまった形で情報交換がされる機会はまだまだ少ないので、本集会が今後のチュウヒの研究と保全に繋がる一助になれば幸いです。

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posted by 日本鳥学会 at 10:28| Comment(0) | 大会報告