2017年10月16日

日本鳥学会ポスター賞を受賞した感想

2017年10月16日
西條未来(総研大)

ポスター賞を受賞できてとても嬉しく思います。
私はまだまだ鳥に関して知らないことが多いので、今回の学会ではたくさんのアドバイスをいただけて、とても勉強になりました。来年の発表に活かしたいと思っています。ありがとうございました。
初めての鳥学会での受賞なので、来年の発表にプレッシャーを感じますが、来年以降も面白い成果を残せるように頑張ります。
副賞として、学会Tシャツとmont-bellのマウンテンパーカーをいただきました!ありがとうございます!去年のポスター賞受賞者で研究室の先輩でもある加藤さんと、うっかり色が被ってしまいました。

ポスターの概略
チドリ目の多くは、河原や砂浜などの開けたところで、地面に巣を作ります。そのため、チドリ目の雛や卵は強い捕食圧に晒されることになります。親鳥は雛や卵を守るために、様々な対捕食者行動を進化させてきました。
チドリ目の対捕食者行動は、大きく2つに分けることができます。1つ目は、モビングなど直接捕食者を攻撃する攻撃行動です。2つ目は、擬傷行動など、捕食者の注意を引き付けるはぐらかし行動です。多くの種は攻撃行動、はぐらかし行動のどちらかの行動をとります。しかし、行動どちらの行動を行うか、その生態学的・進化的な決定要因は明らかになっていませんでした。
本研究では、チドリ目の対捕食者行動の決定要因について、文献調査と系統種間比較を用いて、以下の点を明らかにしました。

@ 体サイズ
体サイズが大きい種は攻撃行動、小さい種ははぐらかし行動をとる種が多いことが分かりました。これは、体サイズが大きい種は卵、雛の防衛成功率が高いが、小さい種は防衛成功率が低く、怪我をする可能性があるためだと考えられます。はぐらかし行動は捕食者との距離が保てるので、攻撃行動に比べて安全であると考えられます。

A コロニー性
コロニー性の種は攻撃行動をとり、はぐらかし行動をとらなくなるような進化的推移があることがわかりました。これは、コロニー性の種は集団でモビングが出来るので、効率的に捕食者に攻撃ができるためだと考えられます。

B 営巣場所
樹上・崖の上に巣を作る種は、攻撃もはぐらかしもほとんどしません。樹上や崖は利用できる空間が限られていますが、地上に比べて捕食圧は低いと考えられます。そのため、樹上や崖に営巣すること自体が一つの対捕食者行動になっていると考えられます。

本研究では、チドリ目の対捕食者行動の種間差を生み出す生態学的・進化的な決定要因について明らかにしました。今後はフィールドに出て、行動観察から新しい発見をしたいと思っています。
来年もよろしくお願いします!

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日本鳥学会ポスター賞を受賞して

2017年10月16日
向井喜果(新潟大)

 私は鳥の研究を始めて6年目になりますが、実は日本鳥学会に参加するのはこれで2度目だったりします。ポスター発表のコアタイムでは、研究を聞きに来てくださった方々と議論しているうちに楽しくなってきて、ポスター賞のこともすっかり忘れて話をしていましたが、審査委員の方が現れてポスター賞受賞とのこと、びっくりしました。自身の研究を評価していただけてとても嬉しく光栄に思うとともに、ポスター賞受賞に恥じないように、これからも日々研究に邁進していかなくてはと身を引き締める思いです。最後に、現地調査や実験などにご指導・ご協力していただいた多くの方々にこの場を借りて御礼を申し上げます。

ポスターの概略
 希少種の生息地保全を行う上で、対象種がなにをどのくらい食べているかといった食性情報は必要不可欠となっています。従来の食性解析では、直接観察や胃内容物分析といった形態学的な手法が行われてきましたが、餌内容の大半を不明種が占めていたり、観察者によるバイアスがかかったりといった問題点が挙げられていました。これらの問題を解決するため、近年、対象種の糞に含まれるDNA情報を基に餌種を特定するDNAバーコーディング法という分子学的手法が注目を集めています。しかし、DNAバーコーディング法のみでは植食性動物の餌となっている植物の葉や実などの部位のどこをどのくらい食べているかを特定することが難しいです。そこで、本研究では、準絶滅危惧種オオヒシクイAnser fabalis middendorffiiがなにをどのくらい食べているのか明らかにするため、DNAバーコーディング法によって餌種の特定を行い、さらに特定された餌植物について部位に分けて餌構成割合を炭素・窒素安定同位体比分析によって評価しました。これまで国内で報告されていなかった種を含む60種の餌植物が検出されるとともに、主要餌植物の各部位の炭素・窒素安定同位体比が有意に異なっていたため、餌植物の部位を含めたオオヒシクイの食物構成割合が明らかになりました。

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2017年09月26日

第二回日本鳥学会ポスター賞 向井さんと西條さんが受賞しました

日本鳥学会企画委員会
佐藤望

 若手の独創的な研究を推奨する目的で設立された日本鳥学会ポスター賞。今年は西條未来さん(生態・行動分野)と向井喜果さん(保全・形態・遺伝・生理・その他分野)が受賞しました。おめでとうございます。
 ポスター賞は昨年より設置された新しい賞ですが、昨年に引き続き今年も40名近くの応募がありました。受賞者はもちろんですが、それ以外にも目の引くポスターがたくさんあり、審査員で議論に議論を重ねて賞を決定しました。
 ポスター賞は30歳を超えるまで何度でも挑戦できます。今回、応募した皆さんには来年も是非、挑戦してもらいたいと思います。残念ながらポスター賞を受賞したお二人は応募する事ができませんが、今後は後輩達のお手本となるような研究・発表を期待しています。
最後となりましたが、ポスター賞の審査を担当して頂いた6名の方、記念品をご提供頂いた株式会社モンベル、大会実行委員にこの場をお借りして御礼申し上げます。

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生態・行動分野の受賞者の西條未来さん(総研大)と西海功学会長

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保全・形態・遺伝・生理・その他分野の受賞者の向井喜果さん(新潟大)と西海功学会長
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2017年09月11日

昨年度黒田賞をいただいて

2017年9月11日
北海道大学水産科学院
風間健太郎


昨年名誉ある黒田賞を受賞いたしましたこと、大変うれしく思います。受賞からおよそ一年が経ってしまいましたが、関係者のみなさまに改めてお礼申し上げます。今年の受賞者は長谷川克さんに決定し(http://ornithology.jp/iinkai/kikin/prizes.html#kuroda)、来週に迫った鳥学会(9/17)で受賞講演があります。拝聴するのが今から楽しみです。

さて、私の受賞理由を拝見する限り、私がこのような立派な賞を受賞できたのは、短い研究経歴の中で行動・生理といった基礎分野から生態系サービスや保全といった応用分野に至るまでの幅広いテーマに関わってきたことを、多少なりとも評価していただいたからだと思います。

昨年大会の受賞講演でも述べた通り、私がこのような多様なテーマの研究を展開してきた理由は決してポジティブなものだけではありません。研究テーマ転換の主たる理由は、雇用問題にありました。

私は大学院博士課程までは一貫してウミネコの行動・生理生態学的研究を行っていましたが、博士号取得後しばらくの間は無給の研究生として過ごしました。その後、名城大学の研究プロジェクトにポスドクとして雇用していただいたのですが、そのプロジェクトのテーマは「里山の物質循環と環境調和型農業」という応用研究であり、私のそれまでの基礎ど真ん中の研究とは大きくかけ離れていました。新たな知識や技術習得までには多くの時間を要するため、研究テーマの大きな転換はともすれば精神的にも大きな負担となります。それでもほかに選択肢のなかった私は、なかば仕方なしにこの研究プロジェクトに従事することになりました。

しかし私の場合、性格がひねくれていたおかげもあり、当初戸惑いばかりだった新規研究プロジェクトへの挑戦も、(周囲からの心配や同情をよそに)気づけば好機ととらえていました。結果的には、このプロジェクトのおかげで安定同位体分析手法を習得でき、鳥類の生態系機能や生態系サービス研究への着想に至りました。このように、窮地として訪れた研究テーマの大きな転換も、その後の多様な研究への展開につながる貴重な機会となったため、今ではありがたかったと思っています。

鳥学会でもたびたび議論されている通り(http://ornithology-japan.sblo.jp/article/172705042.html)、若手研究者の雇用問題は深刻です。一部のきわめて優秀な人を除けば、一貫した研究テーマに長く従事することはもちろん、類似するテーマの短期雇用にありつくことさえ難しくなって来ています。私と同様に、早い段階で研究テーマの大きな転換を強いられる若手も多くなっていることと思います。このような状況においては、研究テーマの転換を前向きにとらえることも大切かもしれません。

もっとも、こうした考え方には賛否あるでしょう。鳥学通信のシリーズ「鳥に関わる職に就く」においても、研究者としてのあり方・考え方について濱尾章二さんが「一芸を伸ばす」ことの重要性について大変説得力のある文章を掲載されています(http://ornithology-japan.sblo.jp/article/174774854.html)。研究者の価値は、高度に研ぎ澄まされた専門性にほかなりませんから、濱尾さんの文章には深く賛同します。「一芸を伸ばす」ことの妨げにもなってしまう頻繁な研究テーマの転換は、研究者としてはもちろん避けたいものです。

私の場合、「一芸を伸ばす」とは少し異なりますが、短期雇用の研究員を渡り歩く中でも一貫して継続してきたことがいくつかあります。その一つが学生時代から継続して来た利尻島でのフィールド研究に毎年通うことです。私はこれまで、どんな雇用条件の下でも(時に有休を使って)利尻島に毎年必ず通い続け、最低限の野外データをとってきました。そうしたおかげで、どのような研究テーマにおいても毎年得てきたウミネコの基礎生態や生活史に関するデータを活用し、常に中長期的な視点を盛り込みながら研究を展開することができました。短期間な成果が求められるプロジェクトに従事しつつも、自身の研究哲学やスタイルを最低限維持する必要はあるかもしれません。

ところで、今この文章を書いている私の現在の雇用期間も残り半年になり、公募書類と向き合う日々が続いています。半年後、私は研究者としてこの業界に残っていられるでしょうか?この記事では窮地を前向きにとらえることの大切さを偉そうに述べてきた私ですが、まもなく(人生何度目かの)無職という最大の窮地を前向きにとらえるほどの度量はもちろん持ち合わせていません。胃薬が手放せない日々はまだ続きそうです。

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最後は気楽な話題で終わりましょう。昨年の鳥学会では受賞祝賀会を開催していただき、なんと70名を越える方々にご参加いただきました(写真)。本当に多くの方々に祝福していただき、参加者の皆様にはこの場を借りて改めてお礼申し上げます。(私の人望がないことを隠すため、いくつかの自由集会の合同懇親会を兼ねて参加者を水増ししていたことは内緒です。)
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2017年01月16日

鳥の学校報告(2016年):第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」

2017年1月16日
企画委員会(文責:水田拓)


鳥の学校−テーマ別講習会−では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っています。第8回は「鳥類研究のためのGIS講習」をテーマとして、2016年度大会の翌日(9月20日)、酪農学園大学において、同大学農食環境学群環境共生学類との共催で実施しました。講師は同大学の鈴木透氏、参加者は35名でした。

講義はパソコンが備え付けられた教室で行われ、参加者は各自そのパソコンを使用しながら受講しました。講師の説明はスクリーンに映し出され、また同じ内容の資料がきちんとファイルされて配られたため、参加者はそれを見ながらパソコンを操作することができました。講義は「GIS(地理情報システム)とは何か」についての説明から始まり、続いてその概念やデータの種類、どのような解析が可能かなど、GISを使用するにあたり知っておくべき基本についての解説が行われました。その後、フリーのGISソフト「QGIS」を各自パソコンにダウンロードし、地図の作成からデータベースの構築、データの作成、データの分析まで、鳥類研究者が実際に使いそうな分析の流れに沿って説明が行われました。

事前アンケートによると、参加者のほとんどはGISの初心者であったため、講師の鈴木氏にはこの参加者層に見合った懇切丁寧な講義をしていただきました。そのおかげで、参加者からは「とてもわかりやすかった」、「今後の研究におおいに役に立ちそう」などの意見が多く寄せられました。
受講者のなかからお二人が参加レポートを寄せてくださり(晝間さよこさん松本経さん)、ご自分の研究との関わり、ためになった点などについて詳しく書いてくださいました。

鳥の学校−テーマ別講習会−は、今後も大会に接続した日程で、さまざまなテーマで開催する予定です。案内は学会ホームページや学会誌に掲載しますので、関心のある方はぜひご参加ください。

講習会風景.JPG
講習会風景


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鳥の学校「鳥類研究のためのGIS講習」に参加して

2017年1月17日
松本経(北見工業大学)


地理的な情報を扱うにはGIS(地理情報システム)ソフトが便利ですが、GISソフトは高額なソフトというイメージが私にはありました。ところが、今回の鳥の学校に参加して、そんな偏見を吹き飛ばしてくれるフリーのGISソフトが既に存在していることが分かりました。酪農学園大学にて開催された講習では、参加者1人1人に1台のデスクトップPCと講習テキストを用意していただき、酪農学園大学の鈴木透さんに講義をしていただきました。午前中は座標値を扱うために必須となる空間参照系や、ポイント、ポリゴンといった空間データの特性の説明から始まり、今回使用した「QGIS」というGISソフトのダウンロード方法と初歩的な操作について、実際にPCを操作しながら体験しました。午後は位置情報を含むデータを利用してQGIS上で地図を作成し、さらにより見栄えのよい地図を作成するための編集方法も教えていただきました。嬉しいことに、インターネット上に公開されている国内植生図、土地利用図、標高データ等の無料ダウンロードサイトについてもご紹介いただき、今後の研究にとってとても有益な情報も得ることができました。後半の講習では、GPSの測位データを地図上にポイントとして描画し、道路のようにラインとして表現される異なる種類の地理データとの間で最短距離を算出する方法や、ラインから一定の距離内にあるポイントを特定してラインとの距離を算出・集計する方法、さらには多数のポイントをもとに動物の行動圏を算出してその面積を求める方法などを体験し、GISソフトの便利さを実感しました。

これまで空間情報の分析には高価なGISソフトを購入するしかないという悲観的な思い込みがあったのですが、特殊な分析方法を必要としないのでしたら、QGISでも分析者の要求を十分に満たしてくれると思います。特に、日本語版QGISはソフト内の表記はほぼ全て日本語で表記されているため、GIS初心者にとってもありがたいソフトです。最近ではQGISに関する書物も増えてきているようですので、鳥類研究に限らず様々な分野でユーザー拡大の可能性を秘めている有望なフリーソフトといえるでしょう。今回の講習会を企画・運営してくださったスタッフの方々に改めて感謝いたします。
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鳥の学校「鳥類研究のためのGIS講座」に参加して

2017年1月16日
晝間さよこ(東海大学大学院人間環境学研究科1年)


私は現在、西表島に生息するカンムリワシの繁殖生態や生息環境の解析を研究テーマとして修士研究に取り組んでいます。カンムリワシの生息環境を解析するには、QGISを利用したいと考えており、これまでは操作方法などを独学で勉強していました。しかし、専門書や論文だけでは理解しきれないところが多く、思うように操作できないことが多々ありました。今回は鳥の学校で「鳥類研究のためのGIS講座」が開催され、QGISの専門家の方から詳しく操作方法を解説して頂けることを知り、基礎から学びたいと思い本講座に参加させて頂きました。

本講座では、QGISの導入として始めに「QGISとは何か」という説明がありました。QGISの基礎となる部分について、データの種類から形式、また空間参照系など、配布された資料をもとに順を追って説明をして頂きました。これにより、QGISが地理情報システムとしてどんなものなのかというイメージをより明確に掴むことができました。QGISで解析をするにあたって使用する基礎データは、国土地理院や環境省のサイトから無料でダウンロードすることができます。それに加えて、Rなどの統計ソフトも用いることで、データ同士の関係性の分析や将来予測が可能になるなど、解析の幅が広がることを知り、ぜひ応用してみたいと思いました。また、本講座では、あらかじめ用意されたデータを用いて、より実践的な操作を学びました。データには、植生図や点の情報が用意されていました。それらを用いて、バッファの作成から、そこに重なる植生の抽出や植生面積の算出、2点間の距離の測定など、アドバイスをいただきながら自分で解析ができるようになりました。私と同じ研究室に所属する、海鳥の採餌海域について研究を行っている卒業研究生も講座に参加しました。GPSなどで得られた点の情報と植生図のような面の情報を組み合わせて解析を行うことができることをしり、現在はGPSから得られた海鳥の採餌海域の環境評価にQGISを利用できないかと、研究を進めています。

短時間の講座でしたが、QGISを学び、理解するきっかけになりました。日本鳥学会を通して視野を広げ、さらに本講座によって学生自身の問題解決に取り組むという良い機会となったのではないでしょうか。
posted by 日本鳥学会 at 19:36| Comment(0) | 大会報告