2018年12月02日

訃報

日本鳥学会事務局

日本鳥学会重鎮のお一人であった中村司さんが11月24日に91歳で亡くなられました。27、28日にはお通夜、ご葬儀が執り行われました。

中村さんは1990−1991年に日本鳥学会会頭を務められました。また、学会は中村さんより多くの寄付をいただき、これらを1997年に中村司基金としました。この基金は当初シンポジウム等開催費に充当していましたが、現在では若手会員を奨励する中村司奨励賞の副賞に充てられています。

ご高齢になられても積極的に学会へご参加いただき、若い会員の方でもよくご存じの方が多いと思います。そのお姿も見られないのは残念です。

ここに謹んでご冥福をお祈りします。
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2018年08月14日

国後島訪問記(2018年6月1〜4日)Part3

(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 嶋田哲郎

2018年6月3日(Day 3)
 
 “ジュニア〜”と所長が叫ぶと長話が始まる,という共通理解ができました.福田さんも小笹さんを呼ぶときに“ジュニア〜”と呼び始め,“ジュニア〜”が頻繁に聞かれるようになってきた3日目,古釜布北の太平洋側の海岸を荒島目指してすすみます.荒島は海鳥の繁殖地として有名なところです.
 がたがた道ですが,気持ちのよい海岸線.どこで降りてもオオジシギがさえずっています.古南さんがオオジシギの調査をやってみることになりました.野鳥の会で現在行っている調査で,定点で10分間にさえずっていたオオジシギを記録するというシンプルなもので,そのデータをマッピングすることで分布の濃淡がわかります.今後,国後島ではガリーナさんが担当してこの調査をやることになりました.国際協力による共同調査といえばおおげさですが,できる人がつながれば物事はすぐに動くのです.
 途中,浅い川は無理やり車で渡りますが,どうしても渡れない川には,大きな土管のようなものを数本入れて流れを阻害しないようにしつつ,その上に砂利を敷いただけの道がありました.川を渡るという目的を最小限の労力で達成しています.大雨で流されても土管を再び並べて砂利を敷けばすぐに復旧できます.橋などのしっかりした構造物にしてしまうとかえって面倒くさいことになる気がします.不便なところだけ最小限の手を入れてなんとかする,本来の自然とのつきあい方をみた気がしました.
 海岸沿いを引き続き北上します(写真12).
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写真12.人工構造物のない海岸線.

 ここでもアマモがたくさんみられます.国後島の北部太平洋側ではいくつかコクガンの位置情報を得られていますが,中央部ではありません.しかし,ここにも来ている可能性が十分にあります.岩場で鳥を観察していると,遠くからエンジン音が聞こえ,数台のバギーがやってきました.さっそく所長は話し始めます.所長は基本的に人が好きなのだと思います.調査中に出会う人たちと必ずといっていいほど話をします.バギーの人たちはハンターでした.なんと古釜布近くでシジュウカラガンを見たとのこと.実は昨日のエフゲニーさんのプレゼンで,シジュウカラガンは今年初めて国後島で記録されたと聞いたばかりでした.帰りにその場所に行ってくれるというありがたいお話です.
 アザラシの群れが休んでいるのをみました.300頭くらいでしょうか(写真13).
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写真13.アザラシの群れ.

 “体の模様で丸に点があるのがゼニガタアザラシ,点だけのがゴマフアザラシ”と松田さんから明快な解説をいただき,すぐに識別できるようになりました.荒島が近づくについて,岩場が多くなり,慎重に歩く必要がでてきました.所長はそれでも遠慮なく“ジュニア〜”と叫びますし,それに似た声で福田さんも“ジュニア〜”と呼びかけます.列の前から後ろから“ジュニア〜”を聞きながらすすみます.少し霧が出てきた中,見上げると少し恐怖を覚えるほどの高さの崖の下を足元に注意しながらすすみます(写真14).
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写真14.崖の下を慎重に進む.

 すぐそばは海です.あちこちで立派なコンブが打ちあがっています.ロシア人は海藻類を食べないとのこと.うーんもったいなあとつぶやきながら歩を進めました.
 霧がだいぶ濃くなり,荒島は見えませんでしたが,海面にケイマフリがたくさん浮かんでいます(写真15).
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写真15.ケイマフリ.

 はじめて近くで見ました.英名でSpectacled Guillemot.黒い体に目の周りだけが白いめがねをかけたように白く,足は赤色.そして”フィーフィー,ピューピュー“ととても美しい声で鳴きます.とても可愛く,魅力的な鳥でした.その沖合いにはエトピリカ.贅沢な時間でした.しばらくすると少し霧が晴れ,荒島が姿を現しました.海鳥の一大繁殖地です.以前来たことのある福田さんは感無量のようでした.
 この踏査途中の海岸沿いに温泉があります.この温泉,1日目の行程説明で所長が力説していた場所で,2日目の別れ際にも入ってみないかと熱烈にお誘いいただいた場所でした.なんとしても温泉に入りたかったようです.私たちは温泉に入る時間があるなら鳥を見ていたいと思っていたので,遠慮がちな雰囲気を出していました.とはいえ,そのままスルーするのもどうかなという感じでした.というわけで帰る途中にちょっと立ち寄りました.日曜日ということもあって多くのロシア人が集っていて,食事をしながら楽しんでいました.手を入れるとちょうどいいくらいの湯温でした.日本人がめずらしいのでしょうか,さっそく松田さんや福田さんを囲んで記念撮影.
 帰り道,ハンターからいただいたシジュウカラガン情報をもとに,シジュウカラガンを探しに行ってくれました.牧草地にいました!2羽のシジュウカラガンが草本を食べながら移動しています(写真16).
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写真16.シジュウカラガン.

 シジュウカラガンは一時絶滅の危機に瀕しましたが,1995年からロシア科学アカデミー,日本雁を保護する会,仙台市八木山動物公園との共同プロジェクトが始まりました.八木山動物園でシジュウカラガンを増やし,それをカムチャツカ半島にある増殖施設でさらに増やし,それらを捕食者のいない千島列島のエカルマ島で放鳥するというものです.近年,シジュウカラガンの個体数は増加傾向で,2017/18年には日本国内の越冬数が5,000羽ほどにまでなりました.しかし,エカルマ島付近で繁殖し,千島列島沿いに渡っていると思われるものの,繁殖地や中継地など渡り経路は不明のままです.2018年5月にシジュウカラガンが国後島で初めて記録されたこと,そして今回この調査でも観察できたことは大きな収穫でした.
 シジュウカラガンは私たちを多少警戒しつつも,ゆっくりと草本類を食べていました.日本で観察しているシジュウカラガンとあまり変わらない警戒感に,日本にも滞在していたのかもと思いました.北海道と国後島の距離は20km程度,渡り鳥は十分に行き来できる距離です.コクガンやシジュウカラガン以外にも,国後島で捕獲され,GPS追跡されたタンチョウが北海道別海町に移動したこともわかっています.あらためて国後島は身近な島だと感じました.
 夜は日本側がホストとなって,保護区の方々を招く夕食会.ロシア式の宴会は小さいグラスにウオッカを注ぎ,だれかが乾杯の音頭をとった後に飲み干し,しばらく会食した後に次にだれかが乾杯の音頭をとる,というようにすすんでいきます.酔いながらの通訳,たいへんだろうなあと思いましたが,“ジュニア〜”が大活躍.ガリーナさんが“日の出ずる国の方々と交流できてうれしい”とおっしゃって下さいました.また,キスレイコ所長がただものではないということもわかりました.以前,北海道の知床と,ロシアの特別自然保護区3ヵ所(国後島,択捉島,小クリル列島にある自然保護区)を基盤に,「クリル・北海道統一自然保護複合体」を創設することを提案したそうです.私はこの考えにとても感銘を受けました.

2018年6月4日(Day 4)

 この日,二日酔いだった私に書くべきことはありません.根室港に戻ってからの記者会見も二日酔いの気持ち悪さを我慢するばかりでした.ちゃんとしゃべれていたかどうか,自信がありません.ただ,中標津空港までお送りいただいた福田さんが飼われている馬をみせていただき,そして初めて馬に触り,癒されたことだけが強く印象に残っています.
 今回の調査,私にとってたいへん貴重な経験となりました.お声がけいただいた団長の白木さんには心から感謝申し上げます.そして白木さんのお考えで,沿岸・海洋域の,しかも鳥類だけにしぼった専門家の編成であったことが,短い日程の中で効率的かつ中味の濃い調査を実施できた要因だと思います.すばらしい仲間との充実した旅でした.貴重な機会をいただいた者として,この経験を活かした活動をしていかなればなりません.
最後に,本調査は一般財団法人大竹財団の助成を受けた北海道鳥類保全研究会によるプロジェクト「北方四島における鳥類保全に向けた日露共同調査と協力体制の構築」の一環で,北方四島交流事業「特定非営利活動法人 北の海の動物センター 国後島鳥類調査専門家交流」として実施されたものです。 
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2018年08月07日

国後島訪問記(2018年6月1〜4日)Part2

(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 嶋田哲郎

2018年6月2日(Day 2)

 朝,私たちを迎えに来てくれた車は日本で言えば車高の高いワンボックスカーのような感じでした.人を乗せて運ぶことだけに特化されたような装備で,質実剛健,無駄なものは一切ないという作りです.このことがどれだけ重要なことか,あとで知ることになります.
 この日は,古釜布から南の方へ向かい,オホーツク海側の材木岩を目指します.アスファルトの道路は町を出るとすぐに砂利道に変わります.林の中の砂利道を車はなんなく疾走し,途中でオジロワシの巣を観察しました(写真4).
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写真4.オジロワシの巣.

 私はオジロワシの巣をじっくりと観察するのは初めてでした.国後島でのオジロワシの繁殖は比較的うまくいっているようで,ヒナらしきものも観察できました.
 東沸湖近くの湖ではオオジシギが賑やかにさえずる中,スズガモの群れが見られました.ここで繁殖しているそうです(写真5).
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写真5.スズガモの群れ.

 気持ちのよい景色をしばらく楽しんだあと,シマフクロウが繁殖しているというアンドレーエフ川に向かいました.日本から流れ着く牡蠣筏のブイを再利用してシマフクロウの人工巣を作っているそうで(写真6),シマフクロウにけっこう気に入られてるとのこと.
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写真6.シマフクロウの人工巣.

 川沿いにすすみ,人工巣に近づくと大きなフクロウが飛ぶのが見えました.シマフクロウです.木に止まって振り返ったところを双眼鏡でみることができました.初めて見るシマフクロウ,鳥とは思えないその威厳に圧倒されました.
 道中,キスレイコ所長の案内は絶好調です.英語が通じないため,小笹さんの通訳だけが便りです.小笹さんは所長の後ろにぴったりと付き従い,時折立ち止まって説明する所長の通訳をしてくれます.所長は説明したいことがたくさんあるようで,なかなかに長い説明です.所長の説明長いなあ,言葉は通じなくとも全員が共有する感情が芽生えてきました.
 次に向かったのは材木岩に向かうトレイルです.しばらく林の中を歩き,海岸に出ます.トドマツやアカエゾマツなどの林からアオジやウグイス,エゾムシクイなどの声が聞こえてきます(写真7).
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写真7.林の中の様子.

 ここは人一人通れるくらいの狭い道.どうしても人と人の間が空きます.小笹さんが大好きな所長は,彼が近くにいないとわかると遠慮なく,”ジュニア〜”と叫びます.そのたびにタッタッタッと小笹さんが走っていきます.”大変ですね,どんな話でしたか?”と後から聞くと”ちょっとした小話なんですよね”とのこと.所長と小笹さんの間合いが気になり始めたのはこの頃からでした.
 海岸に出た後,材木岩を目指して歩きます.海岸にはたくさんのアマモがありました(写真8).
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写真8.干潮時にあらわれたアマモ群落.

 アオサもあります.コクガンはこのアマモが大好物です.野付湾で多くのコクガンが中継するのもアマモがたくさん生えているためです.今回の調査の私の目的のひとつはこのコクガンの生息可能性を評価することです.エフゲニーさんから沖にはアマモの群落があり,ホッカイシマエビがたくさんいると聞きました.コクガンの飛来する条件は十分に揃っています.2014年春に衛星追跡したコクガンはオホーツク海側には滞在しませんでしたが,きっとここにも来ているのだろうなと思いました.
 時折遠くから聞こえてくる”ジュニア〜”という声を聞きつつ,海岸線を踏査していきます(写真9).
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写真9.海岸線.対岸に知床半島を望む.

 材木岩周辺の海岸は歩くには危険なため,林の中を迂回することになったのですが,これがなかなかの急傾斜.かなりしんどかったのですが,材木岩の奇観をみると疲れも飛びます.柱状節理によってできあがったまさに材木をたばねたような岩.自然に形成されたものとは思えないほど美しい姿でした(写真10).
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写真10.材木岩.

 昨日買い込んだ食材でお昼.私は1992年にコリマ川河口のツンドラでガン類の捕獲調査に参加させていただいたことがあり,そのとき一番印象に残っていた食べ物が黒パンでした.その黒パンにチーズやハムをのせて食べる,幸せなお昼でした.そのときキョーン,キョーンという声,西沢さんがすかさず“クマゲラだ!”.林に双眼鏡を向けるとカラス大のキツツキが移動しています.シマフクロウに続き,初めてのクマゲラ.ありがたい気持ちでいっぱいでした.
 海岸を歩きながらも所長の話は相変わらず絶好調です.所長,早く帰ろうよ,という他のロシア人の気持ちがなんとなく伝わってきます.あとで理由がわかりました.車は途中まで迎えにくれていて海岸沿いの道なき道を走って帰ります.そのため潮が満ちたら帰れないのです.実際にもう少し遅かったら潮が満ちて通れないなという場所があり,けっこうまずい状況だったのではないかと思いました.車高の高い頑丈な車が大活躍です.けっこうな水深の海や川をなんなく越え,そのまま倒れるのではないかと思えるくらい車体が傾いてもガンガン走り続けます.私たちは無事に古釜布まで戻りました.
 帰った後は博物館で情報交換会です.このことを地元の方にも広報していたようで,保護区以外の方々もいらしていました(写真11).
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写真11.情報交換会.

 小笹さんの通訳のもと,私たちはそれぞれの専門の鳥について順番にプレゼンしていきました.すごいなと思ったのは古南さん.グーグル翻訳を使ってプレゼンの文字をロシア語表記にしていました.機械翻訳なので十分ではないとおっしゃっていましたが,英語より断然通じるはずです.エフゲニーさんのプレゼン&ビデオ紹介もあり,お互いに鳥類の情報交換を行いました.
 こうして極めて中味の濃い一日が終わりました.振り返ってやはり片言でも意思疎通できたらいいなと思った私は,小笹さんからいただいたロシア語会話の小冊子から,どこ(グジェ),何(シトー),どんな(カーク),いつ(カクダー)などをフィールドノートに書いておきました.これを言えばなんとかなるかなと思いつつ.
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2018年07月31日

国後島訪問記(2018年6月1〜4日)Part1

(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 嶋田哲郎

2018年6月1日(Day 1)

 根室駅前のえびす屋旅館を出ると,かなりな風.昨日の手続きで船は出ると決まったものの,大丈夫かという不安が出てきました.準備を終えて桟橋に行くと,目前に1000トン余りのえとぴりか号がドーンとあるものの,その沖では白波が立っていました.“最近珍しいほどの強風です”と古南さんのダメ押しのコメント.久しぶりの船旅の私はなるようにしかならないと思い定め,船に乗り込みました.
 今回の国後島鳥類調査の目的は,1.生息状況や保全にかかわる情報交換,2.往復航路も含めた鳥類の生息状況調査と日露共同経済活動による風力発電候補地の視察,3.今後の鳥類の共同調査,および風力発電などの経済活動と鳥類保全との両立に向けた意見交換です.調査団は沿岸・海洋域に生息する鳥類を専門とする6名(団長の白木彩子さん(猛禽類),福田佳弘さん・西沢文吾さん(海鳥),古南幸弘さん(シギ・チドリ),嶋田(ガンカモ),松田実希さん(白木さんの学生でオジロワシを研究))に加え,小笹純弥さん(通訳),根上泰子さん(環境省・政府同行者)の2名を加えた計8名です(写真1).
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写真1.えとぴりか号の前にて(左から根上,松田,西沢,福田,小笹,
白木,古南,嶋田).

 調査はいたってシンプルで,行く先々で見た鳥をすべて記録します.根室港から国後島の古釜布港までの海上ももちろん調査します.白波立つ強風の海上で調査できるのかと思いきや,海鳥調査の猛者の福田さんと西沢さんはさっそく調査開始.見た鳥を記録係の松田さんにどんどん伝えていきます.普段海鳥を見慣れてなく,さらにこの高波,私は二人の発するウトウ○〇羽やボソ(ハシボソミズナギドリのこと)〇〇羽を頼りに水面に目を向けるもなかなか鳥を見つけることができません.そして西沢さんは調査しながらも合間に写真を撮っています.カシャカシャカシャという連写音を聞きながら,この状況でなぜ写真が撮れる!?と思ってました.
 中間ライン(国境ではない)を過ぎ,国後島に近づくにつれてだんだん波もおさまり,私も少しずつ海鳥を見られるようになってきました.傍らで彼らが頑張って調査をしている中,私は純粋にバードウオッチングを楽しんでいました.しかし,鳥がどうしても遠い上にじっくり見られない,うーん,もっとしっかりばっちり見たいという思いでした.
 古釜布港に近づくと全員,船室に入るように指示され,写真撮影は禁止されます.今回のビザなし交流は,墓参で択捉島へ向かう方々と国後島へ向かう私たち専門家チームに分かれていました.えとぴりか号は我々を国後島へ下したあと,択捉島へ向かうのです.ただ,入域手続き(入国ではない)は古釜布で行うようでした.
 古釜布港は水深が浅いため,えとぴりか号は桟橋に横付けできません.沖合に停泊し,迎えの船を待ちます.事前準備の段階でGPSやスマホ,パソコンなど電子機器の持ち込みが厳しく制限されており,違反したら日本に帰れないのか!?とビクビクしている中での手続きです.書類の顔写真との照合の後,迎えの船(友好丸と日本語表記がありました)に乗り込み,無事に古釜布港に到着しました.結局,チェックといえば,その顔照合だけで,荷物検査もなくそのまま迎えの車に乗り込んで,保護区の事務所に向かいました.
 途中,国後島での調査経験のある福田さんが道路がアスファルトになっていると驚いていました.以前はすべて砂利道の道路だったそうです.保護区の事務所に到着すると,すでにお茶の準備がしてあり,キスレイコ所長をはじめ,副所長のエフゲニーさん,数日前に赴任したばかりのガリーナさんとさっそく打ち合わせ開始.保護区側はジャムや卓上カレンダーなどのプレゼントを個別に準備くださっており,こちらも根室で準備した贈り物でまずはプレゼント交換.古南さんのご厚意で準備いただいた木彫りのフクロウ,通訳の小笹さんの機転で保護区あてが所長あてとなったという勘違いもありつつも所長はとても喜んで下さいました.結果オーライです.それでテンションが上がったのかもしれませんが,所長のマシンガントークが続きます.なんとなくこれからの旅の雰囲気を予感させるものがありました(写真2).
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写真2.左からキスレイコ所長,エフゲニー副所長,ヤーコブレフさん,
ガリーナさん.

 行程の確認をした後,白木さんのご提案で古釜布近くの風車建設予定地をご案内いただくことになりました.所長たちのご案内で徒歩で現場に向かいます.すれ違うロシア人の中にはニコニコしながら,”こんにちは”と”に”にアクセントをつけた発音で挨拶してくれる人もいます.私は前日に覚えたばかりのズドラーストヴィチェ(こんにちは)で返しました.2階建てのアパートの屋根にオオセグロカモメが営巣しているのを観察しつつ,町を抜けると海岸線に出ました(写真3).
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写真3.アパートの屋根で営巣するオオセグロカモメ.

 海食崖になっていてたしかに風況は良さそうです.しかし,こうした海食崖に風車を立てるとオジロワシがよく衝突することがすでにわかっています.それに人家にも近い.さらに雄大な爺爺岳を遠くに眺めるすばらしい景観.ここに立てなくもいいのに,と思いつつ散策しました.翌日の食料などを買い込んだ後,宿泊場所となる日露友好の家に戻りました.
 翌朝,待ち合わせの時間通り所長さんたちが迎えに来てくれました.所長が”ジュニア〜はどうした?”という身振りで聞きます.ジュニア?,純弥,ああ小笹さんのことかと合点がいきました.旅のキーワードとなる”ジュニア〜”を聞いた最初の瞬間でした.
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2016年09月23日

バードリサーチ調査研究支援プロジェクト 研究プラン募集中(10月末まで)

2016年9月23日
NPO法人 バードリサーチ 植田 睦之


下世話な話ですが,お金,欲しいですよね。世知辛い昨今,所属機関や家計からなかなか調査費用も出してもらえない場合に,少しでも調査費があると助かります。でも研究を続けていくうえで,もっと大切なのが,自分の研究をみんなに知ってもらうこと。知ってもらえたら,何かの際に共同研究など研究を拡げることができるかもしれないし,原稿依頼も来るかもしれず,これから研究機関への就職を目指す人は,その点でも有利になるかもしれません。
この2つ,一気に満たしたいと思いませんか? 深くうなずいたあなた,バードリサーチの「調査研究支援プロジェクト」の調査プランに応募しませんか?

バードリサーチの調査研究支援プロジェクトは,支援対象の研究プランを選定し,それに対して募金を募るプロジェクトです。もらえるお金は寄付金次第ですが,これまでの実績を見ると数万円から数十万円とそれほど大きな金額ではありません。でも,プラン選定の一次審査では大御所の研究者の方たちにじっくりプランを見てもらえますし,支援対象に選定されればバードリサーチの会員など数千人の人に研究を知ってもらえます。

プラン応募の締め切りは10月末。詳しくは 以下のホームページをご覧ください
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/index.html

注意点としては,応募のためには,バードリサーチの会員になる必要があることです。「お金をもらうために,まず会費が必要なんて,典型的な詐欺の手口だな」と思いましたか? 会費の必要な有料会員になってもらうのは大歓迎ですが,会費無料の協力会員でも応募できるので,詐欺ではないと思います。きっと。

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