2021年12月31日

卒論、修論を書いている学生さんたちに役に立つかもしれない2つの情報

広報委員会 三上修

 鳥学通信、月二報を維持しようとしている三上です(今月はまだ一報なので、がんばっています)。

 さて大晦日です。大晦日といえば、卒論だったり修論だったりするのではないでしょうか。私も、修士2年のときは、大学で新年を迎えた気がします。今は、あんまりそういうことをすると問題になったりするので、みなさんはそこまではしていないかもしれません。

 そんな苦労をしているかもしれない学生のみなさまに情報を2つ。

英名と学名を調べる

 1つは英名や学名です。

 鳥の論文を書いているときに面倒なのが英名や学名です。研究対象1種ならいいのですが、何種も出てきたりするとその都度、調べるのが面倒です。鳥類相を調査したり、あるいは引用したりする際に、一覧にしなくてはならない場合も出てきます。そういうときは以下のようなところで調べると早いです。

バードリサーチの鳥名リスト
https://www.bird-research.jp/1_shiryo/index.html

IOCのLife List
https://www.worldbirdnames.org/new/ioc-lists/

 学名は、最終的には、鳥類目録を確認するのも忘れずに。

 なお繁殖している鳥に限られてしまいますが、学名やその他の生態情報を調べる際に、JAVIANデータベースもとても有用です。
http://www.bird-research.jp/appendix/br07/07r03.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/birdresearch/7/0/7_0_R9/_article/-char/ja/

 ちなみに私は一覧とか作るときの手間を省くために、エクセルで適当に作ったファイルを持っています。何かの役に立つかもしれないので添付しておきます(注意!:マクロとか埋め込んだりませんし、ウイルスチェックもしましたが、使用に際して不利益があっても責任はもちませんので、ご注意ください)。
標準和名から学名と英名を調べる_20211231.xlsx

 1つめのシートのA列に標準和名を入れると、横に英名や学名のリストがでます。これを作成する際に、バードリサーチの鳥名リストとIOCのLife Listを使っています。分類の変更などによってIOCのほうの学名や英名が出てこない場合もありますが、その場合はIOCのリストを詳しく読むとだいたい解決します。


引用文献のページ数を表す横棒

 もう1つは「横棒」の問題です。

 引用文献を作る際にはEndNoteなどの便利なアプリがありますが、学部4年生は、そのアプリを使いこなすこともなく卒論を書くことになるでしょう。となると引用文献を手打ち入力(なんか美味しそう)しなくてはならなくなります。そんなときに迷うのが横棒です。

 論文を引用して、100ページから120ページと示したいときに、横棒はたくさんあって、どれを使うのが正しいのか迷います。たとえば、このように。
100-120
100‐120
100–120
100−120

 上から、マイナス、ハイフン、エヌダッシュ、エムダッシュと呼ばれる記号です(正確に表示されているかどうかはわかりません)。ほかにも横棒はいろいろあってとかく面倒です。このうち「間(つまりページの間)」を表す記号は3つ目のエヌダッシュです。
https://site.uit.no/english/punctuation/hyphen/

 エヌダッシュは、MS Wordで書いていて、テンキーがあって、Winであれば、Ctrlキーを押しながら、マイナス記号を押すと出てくるはずです(Macの場合は、Ctrlキーの代わりにOptキー)。ノートPCの場合はテンキーがないのでNumLkキーを使ってやればいいはずです。

 ここでも条件を書きながら説明したように、実際にエヌダッシュをどうやって書くかは、OS、アプリ、キーボードなどの複数の要因が関わってきます。詳しくは、自分の使用環境を把握して検索してみてください。一回だけ書いて、後は使いまわすといいですよ。

 では、体調を崩さないように論文作成をがんばってください。
posted by 日本鳥学会 at 17:51| 鳥学の知恵袋

2016年12月05日

論文(おもに海外雑誌)の入手方法

2016年12月5日 広報委員長 三上修

原稿が少ないので、広報委員長自ら原稿を書こうと思います。一応、鳥学通信は月2報くらいを目指していますから。

今回の内容は、「論文(おもに海外雑誌)が読みたいけれど、手に入らない場合どうすればいいか」です(下の図は、図がないと寂しいので無理やり作成したものです)。

図3.png

昨今、大学間で読める論文に格差があることが問題となっています。
たとえば以下のようなところに議論があります。
河野太郎 ちょっと研究者の皆様へ
知の格差──電子化時代の大学図書館における図書資料費の変動──
電子ジャーナルの効率的な整備
外国雑誌のRenewalと価格問題

あくまで私個人の感覚になりますが、トップ大学(たとえば東大)では、ネット上で検索して「読みたい」と思った論文の9割くらいは、その場でダウンロードできます。これが、有名国立大学だと(たとえば東大京大を除く旧帝大)7割くらい、有名私立だと5割くらい、地方大学だと3割くらいになります。個人宅になれば、1割くらいでしょうか。あくまで個人の感想です。

なぜそんなことが起こるかといえば、各大学の図書館で契約している雑誌、あるいは出版社(最近は、出版社で複数の論文がパッケージになって契約対象になっています)が異なるからです。

この「読みたいときに読めない」というのは、かなりのストレスです。大学間格差を嘆いても良いのですが、それでは何も解決しないので、いくつか私が使ってる方法をご紹介します。

1.買う
論文1本1本を買うことができます。ただ、恐ろしく高くてワイリー(多くの科学論文の出版を手がけているいる大手の出版社)だと、48時間読むだけで6ドル、クラウド上に置くだけ(ダウンロードできない、読むだけ)だと15ドル、PDF購入だと38ドルかかります。1つの論文にさすがに4000円を払う気にはなりません。せめて500円くらいになれば、買う気になるのですけれど…。

2.リポジトリを探す
雑誌によって規定が違いますが、「投稿したバージョン」は、著者が所属する大学の図書館においている場合があります。それを見つけると論文の大筋はわかります。
たとえば、ワイリーの規定には、以下のようにあります。
http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=30591

3.著者に請求する
著者本人に直接メールを書いてお願いする手もありますが、ResearchGateのようなものを使う方法もあります。
このあたりも、実は細かいルールがあるので出版社情報をご確認下さい。ここでは先ほどのワイリーの規定を載せておきます。
http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=30591

4.無料で読めるところを探す
たとえばJSTORという電子図書館みたいなところでは登録すると、3つの論文を「棚に置くこと」ができます。「棚においた論文」はダウンロードはできませんが、ブラウザ上で読むことができます。この「棚においた論文」は2週間経つと取り除くことができ、また新たに論文を「棚におく事=読むこと」ができます。お金を払うと、よりたくさんの論文を「棚におく」ことができます。JSTORでは、月19.5ドルで、読みたい放題(たぶん?)になり、10個の論文PDFをダウンロードできるようになります。

5.DeepDyveで読む
4に似ていますが、お金を払うとネット上で論文を読むことができます(ダウンロードはできません)。DeepDyveというサイトだと、月に40ドル払うと、DeepDyveにある雑誌の論文なら読み放題になります(ただし、すべての雑誌があるわけではありません。少しずつ増えてはいますけれど)。鳥学関係だと、IBISやJournal of Avian Biologyならここで読むことができます。
なお以前、知人にこのサイトの有益性を話しをしたら、わかってもらえませんでした。なぜなら、その知人がいる大学では、そんなものに頼る必要がないからです。あの時は泣けました。

みなさまも、ほかに良い方法があれば、お教えください。そして、それを鳥学通信に投稿してくださいませ。
posted by 日本鳥学会 at 17:45| 鳥学の知恵袋