2016年07月26日

鳥の学校で学んだこと

2016年7月26日
中川寛子(鹿児島大学農学部5年)


私は昨年にバンダーの資格を頂き、初めて自分自身で標識調査を進めることになりました。その中で、調査方法や死体の保存など、これで衛生的に問題ないのだろうかとか、調査中に鳥に怪我を負わせてしまったらどうしよう、といった不安が出てきました。調査では研究目的で糞の採取も行っており、サンプルのコンタミを防ぐのはもちろん、研究方法が一般の人に誤解や疑念を与えるようなものではいけません。しかし現実的に何をどうすれば良いのか分からない、そんな折にちょうど鳥の学校でこの講義があることを知り、迷わず参加を決めました。

葉山先生の講義では正しい手洗いの仕方から、使用目的に合わせた消毒液の選択や、死体の処理や送付時の注意点、使用した衣類や器具の洗浄・消毒方法などまさに日ごろ疑問に思っていたことを細かく教えて頂けました。先生が実際に使用されている道具なども見せて頂け、具体的にイメージができ道具をそろえる際の参考になりました。

高木先生の鳥の救護方法は大変興味深く聞かせて頂きました。鳥にも人工呼吸できるなんて考えてもみませんでしたし、捕獲時筋障害という病態があることも初めて知りました。アロンアルファが骨折の治療に使えることは特に驚きでした。救護には丁寧な観察と様々な工夫がなされていることを感じると同時に、鳥の研究をさせてもらっている身として、もっと鳥のことを勉強しなくてはと思いました。

講義の後も調査方法についてアドバイスを頂き、他の参加者の方々のお話も勉強になることが多くたいへん内容の濃い講義で時間があっという間に感じられました。

鹿児島に戻ってから、さっそく感染・コンタミ防止のために調査の後には専用の服をすぐに洗い、鳥袋も個体ごとに替え使用後は洗浄・消毒するようにしました。鳥の怪我にも備えて、アロンアルファと綿棒、止血鉗子なども用意しています。技術など不十分な面もありますが、自分なりに対策や準備をしておくことで、今までの不安がかなり払拭されました。受講して本当に良かったと思います。お世話になった先生方と企画委員の皆様に、心から感謝申し上げます。
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鳥の学校「鳥類調査のための獣医学講座」に参加して

2016年7月26日
小林さやか(山階鳥類研究所)


山階鳥類研究所では研究用の標本を収集しており、その材料となる鳥の死体を受け入れるのが私の仕事で、日常的に鳥の死体を扱っています。死体に触れるだけではなく、解剖することも日常です。さらに自分で扱うだけではなく、窓に衝突したり、交通事故などで死亡した鳥を一般の方々からいただいたりすることもありますし、受け取ったこれらの死体をアルバイトさんに扱ってもらうこともありますので、今までの扱い方を確認するためにも今回参加することにしました。

前半は講師の葉山さんが野生動物の死体の安全な取り扱いについて、後半は高木さんが生きている鳥をケガさせた場合の処置の仕方をお話ししてくださいました。前半の葉山さんの話が私の業務にとっては関心事です。これまで自分たちがしてきた死体の扱い方、マスクや手袋、白衣を身につける、触った後は手洗い、うがい、特に手洗いは入念にする、ことで問題なさそうということが確認できて、安心しました。今まであまり気にしていなかったのが体調管理です。体調が悪いときには抵抗力が落ちているので、健康なときには感染しなくても、体調が悪いときには感染する可能性が高まるので要注意、と葉山さんのお話しにあり、その通りに思いました。皆さんもどうぞご注意ください。

後半の高木さんのお話についても、バンダーとして鳥を捕獲して標識し、山階鳥研の組織サンプル収集の目的で採血もしているので、興味深く拝聴しました。今まで私が見てきたケガした鳥の症状と高木さんのお話を頭の中で照らし合わせながら、「あの症状の時は、こんなことが起こっていたんだ」と納得することも多々ありました。今回、講演のなかで会場の関係で採血などの実習ができないと説明されていて、企画された方々のご苦労もしのばれるのですが、実習や見学がなかったのがちょっと残念に思いました。次の機会に期待したいと思います。
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鳥の学校報告(2015年):第7回テーマ別講習会「鳥類調査のための獣医学講習」

2016年7月26日
企画委員会(文責:吉田保志子)


鳥の学校−テーマ別講習会−では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っています。第7回は「鳥類調査のための獣医学講習」をテーマとして、2015年度大会の初日(9月18日)、兵庫県立大学神戸商科キャンパスで行われました。講師は、会員であり獣医師である高木(林)英子氏と葉山久世氏に担当いただきました。受講者は45名でした。

最初の講義は、葉山氏による「捕獲調査・サンプル採取・救護における衛生的な取り扱い 〜自分と周囲の人の安全を守り,他に感染症などを広げないために〜」で、捕獲、傷病鳥獣の世話、解剖、サンプリング等の、生体や死体を扱う、人獣共通感染症のリスクが伴う活動における衛生対策の知識と考え方について説明されました。実際の調査やボランティア活動等を想定した、危険度に応じた防護方法の例や、家庭用の塩素系漂白剤など身近で入手できる資材を使った実践的な対策方法も紹介され、受講者は自分が行っている活動と引き比べて理解を深めていました。

次の講義は、高木(林)氏による「現場でできる野鳥救護法 〜鳥の体の構造、現場で起こりうる事故や病気の概要とその応急処置法〜」で、捕獲調査において起こりやすい事故について、鳥の体の構造に基づく発生理由と対処・治療の方法について、豊富な事例や写真を用いて詳しく説明されました。鳥の種類に応じた安全な保定方法、輸送時の収容方法、給餌方法などについても、獣医師が用いる手法が詳しく説明されました。事前アンケートで希望が多かった、鳥の採血の手技については、動画を用いた説明も行われました。受講者からは、専門的な内容を具体的な説明で知ることができ、自分の活動に役立ちそうという意見が多く寄せられました。

消毒薬や衛生資材等の実物も展示され、2つの講義の終了後には、受講者はそれらを手にとりつつ、講師を囲んで自由な質疑が行われました。
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講師のお二人からは、講義で使われたスライドを公開用に提供いただきました。当日の講義内容と、ほぼ同じものとなっています。野生動物の生体、死体、サンプルなどを扱うとき、自分や周囲の人の安全を確保するには具体的にどうしたらよいのか、鳥になるべく負担をかけない取り扱いや、鳥を傷つけてしまったときの対処方法など、当日参加されなかった方も、講義スライドからぜひ知識を得てください(上記文中の講義タイトルをクリック)。

受講者のなかからお二人が参加レポートを寄せてくださり(鳥の学校「鳥類調査のための獣医学講座」に参加して鳥の学校で学んだこと)、ご自分の仕事や研究との関わり、ためになった点などについて詳しく書いてくださいました。

なお、今年の鳥の学校−テーマ別講習会−は、2016年度大会の終了翌日の9月20日(火)に、「鳥類研究のためのGIS講習」を行います。鳥類の研究において、近年よく用いられるGIS(地理情報システム)について、無料のソフト「QGIS」を中心に、その基本的な使い方から応用例まで、専門家に詳しく解説していただきます。会場は、大会が行われる北海道大学札幌キャンパスから近い、酪農学園大学です。詳細は2016年度大会のサイトでお知らせしています。申し込み締め切りは2016年7月31日(日)です。
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2016年07月15日

日本鳥学会2016年度大会の講演申し込みの締め切りは本日(7月15日)です。

2016年7月15日
広報委員会


今年の鳥学会は9月16〜19日に札幌で行われます。
講演の申し込み締め切りは本日(7月15日)です。
まだお申込みされていない方はお忘れなく。
http://osj-2016.ornithology.jp/

宿泊先は、普通のホテル検索サイトでは満室のところが多いようですが、大会サイトからいけばまだ空きがあるようです。
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2016年07月11日

ボランティアのススメ

2016年7月11日
日本鳥学会企画委員会 佐藤望


 企画委員では鳥学研究の促進を目的として、鳥類調査に関するボランティア募集の情報を収集し鳥学会のHPで公開しています。
http://ornithology.jp/volunteer.html
まだ始めたばかりの企画なのでご存じでない方もいらっしゃると思いますが、全国で調査を経験する事ができる場所を掲載しています。

この活動を始めた背景には、鳥の研究に興味があっても研究できる研究室や調査をする場所がなかなか見つからないといった状況があります。また、卒業研究で鳥類の研究をしたいと思っても、限られた期間のなかで一人で調査を0から覚えて実行するのはなかなか簡単ではありません。このような状況下にある鳥の研究を志す人にとって、ボランティアとして野外の鳥類調査に参加することは大きな意味があります。また、所属した研究室が鳥類の研究をしていない場合でも、調査地があってテーマがあれば、鳥類をテーマに卒業研究ができるかもしれません。

私はニューカレドニアなどで鳥類の野外調査をしてきましたが、その間、国内外の学生が参加してくれました。一部の国ではインターンとして海外の調査を経験することが博士課程に進学するために必要らしく、欧州や南米から問い合わせが来て、実際に何人かの学生を受け入れました。彼らは調査に参加することで調査能力や研究の方法を習得できたと思いますが、それだけではなく、毎日の生活の中で多くの議論をすることで受け入れた側にも新しい発見やモチベーションの向上などがありました。
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ドイツからニューカレドニアにインターンで手伝いに来てくれました(著者は向かって右)


海外の若手研究者に負けないよう、特に日本の若手の皆さんにも是非このような場所に飛び込んでもらえればと考えています。もちろん、もう若手じゃない…という人も、きっと受け入れてくれると思いますので、老若男女問わず、積極的にこのボランティア募集情報を活用してもらえればと思います。

また、全国で鳥の調査をしている皆さま、ボランティアを受け入れてはいかがでしょうか。受け入れが可能であれば、佐藤(nozomu ATMARK liferbird.com)まで連絡を頂ければ幸いです。
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鳥学会前会長上田恵介先生の受賞

2016年7月11日


鳥学会の前会長の上田恵介先生が、今年度4月に、「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰者(調査・学術研究部門)に選ばれました。
http://www.env.go.jp/press/102398.html

また、先月末に、第19回山階芳麿賞が贈呈されることが決定しました
http://yamashina.or.jp/blog/2016/06/19th_yamashina_award/
http://www.rikkyo.ac.jp/news/2016/06/17913/
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2016年07月04日

自然史学会連合のご紹介

2016年7月4日
自然史学会連合鳥学会代表 濱尾章二


自然史学会連合をご存知でしょうか。「聞いたような気もするけど、よく知らない」「総会の決算報告で聞く、毎年分担金を払っている団体でしょ」というような方が多いのではないでしょうか。前任の西海さんに代わって、1月からこの連合の鳥学会代表を務めることになりました。この機会に、連合を紹介したいと思います。

自然史学会連合は、鳥学会など生物の分類群ベースの学会や、生態学会・行動学会のような学問分野ごとの学会、また地質関係の学会など、自然史科学関連の39学協会
http://ujsnh.org/societies/index.html
が加盟している連合体で、日本学術会議の協力学術研究団体の一つです。学会の間をつないで自然史科学の振興を図り、研究教育態勢の改善を目指すというのが、設立の理念です。
http://ujsnh.org/about/philosophy.html

設立理念の中には、「自然の正しい理解とその普及が人間教育とこれからの社会にとってきわめて重要」、また自然史研究の成果は「細分化された専門分野を横断した協力と総合によって得られる」と書いてあります。かつての役員の一人(小汐千春)は、「自然界の理解や自然観の形成に役立つということは、『文化』への貢献という点で非常に重要である。私たちの行っている科学とは、まさに『文化としての科学』なのである」と述べています。文化としての自然史科学が健全に育つよう社会に情報発信していくのが、連合の目指すところだと言えましょう。
http://ujsnh.org/activity/essay/useful.html

「なかなかいいことを言っているではないか」と思ってくださった方も多いことと思います。実際、運営に関わってみると、見識が高く、また仕事の速い人が多くて、舌を巻いています。

さて、その仕事の中身ですが、最近の仕事で特筆すべきなのは、「理科好きな子に育つ ふしぎのお話365」という一般書の刊行です。
https://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=4478
鳥学会員で協力した方もいますが、タイトルの通り、39学会の力が結集された力作です。この本は、第63回産経児童出版文化賞(JR賞)を受賞しました。

また、毎年、講演会を行っています。これは全国各地の博物館などを会場に行われているもので、鳥学会員で講演をしたり、協力したりした方もいると思います。
http://ujsnh.org/sympo/index.html
今年度は、詳細未定ですが、群馬県立自然史博物館で2017年1月21日(土)に行われます。

そのほか、自然史科学に関わる各種シンポ、イベントの後援、声明や要望書の提出などを行っているほか、近年は博物館学芸員資格の問題*についても情報交換がされています。

ぜひ一度、自然史学会連合ホームページをご覧下さい。
http://ujsnh.org/

* 学位を持っていても学芸員資格を持っていないと博物館に就職できない場合が多いことや、学芸員資格を得るための授業で自然科学が軽視されている問題などが指摘されています。
posted by 日本鳥学会 at 18:59| Comment(0) | 学会関連情報